警察庁は2日、国の重要施設や周辺での小型無人機ドローンの飛行禁止を定めたドローン規制法の改正を議論する有識者検討会を設置すると発表した。近年の機体の性能向上に合わせ、飛行を制限する範囲を重要施設の上空と周辺約300メートルから拡大することなどを検討。年内にも報告書を取りまとめたい考え。
規制法は、2015年に首相官邸の屋上にドローンが落下した事件を受け、被害の未然防止に向けて翌16年に施行された。国会や各国の大使館、原発などの重要施設の上空と周辺約300メートルでの飛行を禁止する。
法改正もされており、19年には対象に、一部の自衛隊と在日米軍施設が加わり、20年には一部の空港施設が加わった。
現行法では、対象施設の上空でドローンを飛行させた場合は、すぐに刑事罰の対象となり、24年までに21件が摘発された。また周辺約300メートルでの飛行は、警察官らが操縦者を探して飛行の停止や退去などを求める措置命令を出し、従わない場合は摘発される。
機体からの爆発物の落下や体当たり攻撃を防ぐため、警察は電波を飛ばして飛行を妨害する「ジャミング」などをする。しかし警察庁によると、性能が向上した機体では、警察官らが対応している間に施設を攻撃される恐れがあるという。
法施行された16年当時は、機体の最高速度は時速50キロ程度が多かったが、現在は70~80キロに上がっているとされる。積載重量も増えており、ライフル銃のような銃器を搭載した遠くからの攻撃も可能という。
また、映像の伝送距離も200~300メートルだったものが、製品によっては数キロ以上に延びた。機体の近くに操縦者がいて、警察官がそれを探すという前提が崩れている。
そのため、今年6月に閣議決定された政府の「骨太の方針」で、機体の性能向上を受けた対応の必要性が指摘されていた。
設置する検討会では、施設の周辺約300メートルとしている制限範囲の拡大が必要か議論する。措置命令を経ずに摘発できるようにするかも検討する。
また原発など施設の事業者と警察との連携の在り方や、首相ら要人が地方の国際的な行事などに出席する際の事前規制も話し合う。
検討会は、ドローンの専門家や刑事法、行政法に詳しい大学教授ら9人で構成。7日に初会合を開く。【山崎征克】