千葉県白井市と市川市の民家で昨年10月に起きた「闇バイト」による強盗事件の実行役として、強盗致傷や逮捕監禁などの罪に問われた横浜市旭区、内装工高梨謙吾被告(22)の裁判員裁判の公判が6日、千葉地裁(水上周裁判長)であった。検察側は「執拗(しつよう)で苛烈な暴行を繰り返した」として懲役20年を求刑し、弁護側は「(被告は)従属的な立場だった。懲役8年が相当」と訴えて結審した。判決は14日。
大声出し逃げたが…馬乗りで殴られ指折られ
被害者の供述調書などによると、白井市の40歳代女性は自室で仕事をしていた午前1時半頃、「ガシャン」という窓ガラスが割れる音を聞き、カーテンの隙間から黒手袋をした人が入ってくるのを目にした。
「わー」と大声を出しながら廊下に逃げたが、男から拳で頭を殴られて転倒。その後も馬乗りで顔や頭を何発も殴られた。「金を出せ、金はどこだ」。男の要求に「本当にない」と答えると、背中をベルトのようなもので何度も打たれた。
「痛い、うっ」。別室で寝ていた母親(70歳代)の声が聞こえ、別の男から暴行されているとわかった。
男から「金庫を見つけた。20万円くらいある」「他にもあるだろ。1000万、2000万円あるの知ってるんだぞ」と脅された。「ない」と答えると、指示役が男たちの携帯電話のスピーカー越しに「指を折れ、ガラケーみたいにしてやる」と指示。左手の小指を手の甲側に曲げられ、「痛い、痛い」と悲鳴を上げた。母親も同様の暴行を受け、指が折れていた。
男たちはガムテープで2人の腕や両足を縛り、侵入から約3時間後、現金約26万円などを奪って女性の車で逃走した。
連れ去られ「川に捨てられるかも」とおびえる
市川市の女性(51)は就寝中に襲撃され、現金約4万8000円と軽自動車など計15点を奪われた。さらに自分の車の後部座席に押し込められ、埼玉県の宿泊施設に連れ去られた。
「生き延びたい」と思い、抵抗はしなかった。途中、パトカーがサイレンを鳴らしながら追跡し、「助かるかも」と思ったが、聞こえなくなった。男が「女は『カワ案件』だな」と会話するのを聞いて、「川に捨てられるかも」とおびえた。
宿泊施設に警察官が駆けつけ、男1人を現行犯逮捕し、事件発生から約20時間後に女性は保護された。