〈高市新総裁〉支持率上昇なら年末に衆院解散? 国民・玉木党首は「準備を加速したい」と警戒…各党の思惑が交錯する連立政局の行方

自民党の高市早苗新総裁(64)のもとで一気に進みそうなのが、連立枠組み拡大の議論だ。高市氏は総裁選期間中から「国会での首班指名選挙までに連立の枠組みを固める」と明言していたが、果たしてそれは可能なのか。そして、新たな連立相手は一体どの政党になるのか。風雲急を告げる“連立政局”を追った――。
〈画像〉新総裁選出を受けた際の石破首相、菅元首相の反応
連立パートナーの公明党とも国民民主は親和性を持っている
「いや、良かったね。素晴らしい」
高市氏が自民党総裁に選ばれた10月4日の夜、国民民主党の中堅議員は筆者の取材にそう喜びを語った。永田町では、これまで小泉進次郎農相(44)が総理になった場合、自民党が連立相手として選ぶのは日本維新の会だというのが“既定路線”になっていた。
「日本維新の会は、自民党の重鎮の中では、小泉氏の後見人である菅義偉元総理(76)との関係が深いとされてきた。実際、総裁選期間中の9月24日に、維新の遠藤敬国対委員長と国会図書館で会談をしていた。
維新の藤田文武代表(44)も『自民党と私個人は(基本政策の)全てにおいて近い』と前のめりの姿勢を示してきました」(自民党関係者)
仮に維新の連立が実現し、自民党が少数与党から脱却すれば、「年収の壁」の引き上げをはじめとする国民民主の要求を呑む必要はもはやなくなる。“小泉総理”が本命視される中、維新がリードする状況に、国民民主側は焦りを募らせていた。
しかし、まさかの“高市総理”誕生により、形勢は逆転した。自民党の重要閣僚経験者も「これで維新との連立はなくなっただろう」との見方を示す。
「総裁選で『責任ある積極財政』を掲げた高市氏は、『手取りを増やす』をモットーとする国民民主と政策的な考え方が近しい。総裁選期間中から、国民民主が訴える所得税の控除額引き上げや、ガソリン税減税の早期実現を訴えていた。連立パートナーの公明党とも、国民民主は親和性を持っている。
一方、高市氏は参政党とも考え方が近しいと指摘する向きがあるが、参政党は衆院で3議席、参院で15議席しかもっていない。連立を組んだとしても、自民党は少数与党から脱却できないので有力な選択肢にはならないでしょう。参政党の排外主義的な姿勢には、公明党の警戒感も根強い」(前出・自民党関係者)
麻生太郎氏が国民民主と太いパイプ
さらに、総裁選の決選投票で派閥を挙げて支援し、“高市総理”誕生の立役者となった麻生太郎自民党最高顧問(85)は、国民民主と太いパイプを持つ。事情を知る自民重鎮によれば、「岸田政権時代は、麻生さんと茂木敏充前幹事長(69)が国民民主との窓口をしていた」という。
国民民主党の榛葉賀津也幹事長(58)は10月3日の記者会見で、麻生氏と最近会ったかどうかを問われ、「マンガを貸してほしいと会いに行った」と煙に巻きつつも、否定しなかった。さらに、総裁選後の10月6日には、東京都内で麻生氏と約30分間、面会した。
榛葉氏は8月に、自民党の武田良太元総務相(57)がMCを務めるラジオ番組に出演し、こう語ってもいた。
「今、挑戦したいのはやっぱ与党になりたいですね。自民党の中にも武田さんもそうですけど信頼できる仲間たくさんいるし、そうでない人もいるけども」
高まる国民民主との“連立拡大”の機運。しかし、高市氏の言うように、10月15日に予定されている首班指名選挙までに間に合うかといえば、「それは無理」(前出の国民民主中堅)との見方が主流だ。
公明党の斉藤鉄夫代表も10月4日の高市氏との会談後「連立政権は、政策と理念の一致が不可欠で、そんなに簡単ではない」と早期の連立拡大に否定的な見解を示した。
「高市さんが早く連立をやりたい気持ちはわかるが、国民民主側もそんなに簡単に乗れません。まずは昨年12月に自民・公明・国民の3党の幹事長で合意した“年収の壁”の178万円までの引き上げを履行してくれということ。
それが達成できたら、信頼関係が高まって、次のステージに進める可能性が出てくるということです」(前出・国民民主中堅議員)
自民党としては、来年度予算審議が本格化する来年2月までに、連立拡大への道筋を決める必要があるが、それまでは部分的な政策協力を重ねていくことが現実的な道筋のようだ。
「早期解散の可能性が低いとみられているが…」
実際、国民民主の玉木雄一郞代表も高市総裁の誕生について、「政策協議の要請があれば、しっかり向き合いたい」とコメントをしている。前出の国民民主の中堅議員は玉木氏の“本音”について、こう解説する。
「玉木さんとしては、自民党と一定の距離をとりながら付き合った上で、次の総選挙では野党のまま戦って、さらに党勢を拡大したいという戦略がある」
次期衆院選で党勢を拡大した上で、連立入りしたいというのが本音だとすれば、衆院解散総選挙の時期がどうなるかもポイントになるかもしれない。
高市氏は総裁選告示日に「(早期解散は)考えられないこと」と発言し、永田町でも早期解散は可能性が低いとみられている。
ただ、国民民主党の玉木氏は連立入りへの意欲を漂わせる一方で、5日に仙台市内で行われた街頭活動で、「高市氏が首相になって衆院解散する可能性がある」と述べ、総選挙への「準備を加速したい」と警戒感を解いていない。
「支持率がガーンと上がれば、来年1月の通常国会の召集前という選択肢が出てくる可能性がある。それで、もしも衆院で与党過半数を取り戻すことができれば、そもそも連立の拡大も必要なくなるが・・・・・・」(前出・自民党閣僚経験者)
流動的な政局が続きそうだが、国民民主などとの政策協議を基本としつつ、衆参で与党過半数割れのまま“ハングパーラメント(どの政党も過半数を達成していない状態)”の国会運営が当面は強いられそうだ。
高市氏は「人付き合いが得意なタイプではない」(高市氏周辺)とされ、野党人脈も乏しいとされる。野党にパイプを持つ党内人材をうまく活用し、信頼関係をしっかりと構築できるかどうかが、連立の拡大を実現し、長期政権を目指す上での試金石になりそうだ。
取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班