高市首相は24日午後、衆院本会議で就任後初の所信表明演説を行った。安全保障関連費のGDP(国内総生産)比2%への引き上げ目標について、2年前倒しして今年度内に達成すると表明した。「責任ある積極財政」を掲げ、物価高対策に「最優先」で取り組む姿勢も強調した。
首相は演説の冒頭で、自民党と日本維新の会との連立政権の樹立に触れ、「政治を安定させる」と訴えた。両党だけでは衆参ともに過半数に届かない状況は変わっていないため、野党にも政策提案を呼びかけ、「政権の基本方針と矛盾しない限り、柔軟に真摯(しんし)に議論していく」と述べた。
安保関連費は、2027年度にGDP比2%目標を達成するとしていたが、補正予算を含めて25年度中に「前倒しして措置を講じる」と明言。25年度当初予算には約9・9兆円を計上しており、2%(約11兆円)に引き上げるには、補正予算で1兆円程度積み増す必要がある。さらなる増額も見据え、防衛力整備計画など安保関連3文書を来年中に前倒し改定する方針も示した。
物価高対策では、25年度補正予算が「国民の暮らしを守る」ものとなるよう、与野党に協力を求めた。ガソリン税の暫定税率廃止法案の今国会での成立や、自治体向けの交付金の拡充、冬の電気・ガス料金支援に取り組むことに言及した。所得税の非課税枠「年収の壁」の160万円からの引き上げにも意欲を示した。
中長期の経済・財政政策では、「強い経済を構築するために戦略的に財政出動を行う」とし、所得増を税収増につなげる好循環の実現をうたった。「日本成長戦略会議」を新設し、経済安保や食料安保など「危機管理」への投資で強い経済成長を目指す。現役世代の負担を減らす社会保障改革に向け、超党派の「国民会議」を設置し、「給付付き税額控除」の制度設計に着手することも打ち出した。
自民党総裁選で訴えた外国人政策に関しては、「排外主義とは一線を画す」とする一方で、「違法行為やルールの逸脱には毅然(きぜん)と対応する」とし、外国人政策の司令塔の強化や、土地取得などルールのあり方を検討することに踏み込んだ。
27日からの米国のトランプ大統領の来日にも触れ、「日米関係をさらなる高みに引き上げる」と宣言。中国とは、引き続き「戦略的互恵関係」を推進するとしつつ、「安全保障上の懸念事項が存在することも事実だ」と指摘した。