未曽有のクマ被害、対策グッズの品切れ続出…米国製の撃退スプレー1万6467円も売り上げ2倍

盛岡市でクマの目撃が相次いでいる。特に9月以降、市役所や県庁が立ち並ぶ中心部、住宅街の近くで別の個体とみられるクマが次々と出没。23日もクマ1頭が約4時間にわたり、中津川の河川敷などを疾走し、周囲は緊迫した雰囲気に包まれた。これまでけが人や物的被害は確認されていないが、盛岡市は自治体が市街地での発砲を認める「緊急銃猟」の体制整備を急いでいる。
盛岡東署によると、23日午前6時10分頃、中津川にかかる「下の橋」付近の河川敷で、「クマが歩いている」と通行人から110番があった。クマは目撃場所から近い盛岡城跡公園に向かった後、市役所裏手の河川敷のやぶに同7時頃からとどまった。
朝の通勤ラッシュの中、現場では署員や市職員らが対応にあたり、クマと約2時間「にらみ合い」に。散歩中の70歳代女性は「こんな街中にクマが出るなんて恐ろしくてびっくり。被害が出ないといいが」と心配そうに状況を見つめた。
クマはその後、河川敷を走ったり川の中を泳いだりしながら上流方面へ移動。署員らが花火や爆竹を鳴らすなどして追いかけたが、山岸地区の住宅街に逃げ込み、同10時半頃を最後に姿が見えなくなったという。

市中心部では9月以降、クマの出没が続発している。先月25日にはJR盛岡駅からほど近い住宅街の店舗に成獣とみられるクマが体当たりした。今月19、20日には、若園町の住宅街や県庁に近い内丸などでも2~3頭のクマの目撃情報が複数寄せられた。
市の担当者は「どこにクマが出没するかわからない状況にある。家の外に生ゴミを放置しないなどの基本的な対策を徹底するなど、常に注意を払ってほしい」と呼びかけている。
対策グッズ売れ行き好調…例年の数倍、品切れも

クマの出没が相次ぐ中、岩手県内のホームセンターではクマ対策グッズの売れ行きが好調だ。撃退スプレーや爆竹などの商品が例年の数倍売れており、品切れも続出。店舗の担当者は「万が一のために備えてほしい」と呼びかけている。
盛岡市の「サンデー盛岡本宮店」は店頭に特設コーナーを設置した。9月頃から売れ行きが伸び始め、関連商品の売り上げは例年の約6倍に急増。店舗近くの原敬記念館では20日にクマが出没し、翌日には撃退スプレーが完売した。携帯用ブザーも品切れ状態が続いている。
山田町の「ホームワンサトー」では、米国製の撃退スプレー(税込み1万6467円)の売り上げが昨年の約2倍のペースで推移している。店によると、役場関係者やマツタケ採りなどで山に入る客が買い求めているという。
クマが嫌う大型犬の鳴き声を大音量で流す新商品「熊よけわんわんホーン」は、今月販売を始めたが、初回仕入れ分は完売し、現在は第2弾が並ぶ。同店の佐藤正基専務は「お客さんには命を守るために必要なグッズだと説明している。万全な対策をお願いしたい」と話している。