「女性初・36年ぶり関西人首相」で日本は変わる?

今回は、私事に関するご報告から。今月(10月)末で筆者は株式会社双日総合研究所を定年退職し、来月以降は独立して自分の会社(株式会社溜池通信)を足場に、エコノミスト稼業を続けていくことにした。
戦後の「関西出身」首相と在任期間
2012年にこの連載を一緒に始めた山崎元氏、山口正洋氏(ぐっちーさん)は、いずれも同年代ながら早世されてしまったが、自分は幸いにも65歳を超えて仕事を続けている。この連載も小幡績先生(慶応義塾大学・大学院教授)とご一緒に続けていくので、引き続きよろしくお付き合い願いたい。あまり当たらない競馬の予想も、手を抜かずに続けて参る所存である。
もしヒラリー・クリントン氏があの大統領選に勝っていたら……
そんな人生の転機に当たり、ふとこんなことを考えてしまうのだ。 「2016年、皆の予想どおりにヒラリー・クリントン氏がアメリカの大統領になっていたら、俺の仕事など今の半減以下になっていただろうなあ」
今年になってから当欄で書いてきた記事も、トランプ政権に関するもの、特に「トランプ関税」や日米交渉の行方、さまざまな地政学リスク、加えて国内政局、それらがマーケットに与える影響などがほとんどだ。そういう意味では、筆者に仕事が来るのは「トランプさまさま」ということになる。それくらいこの世の中には、「トランプがらみ」の不確実性、不透明性が強いということであろう。
この歴史上の「イフ」を少しだけ深掘りしてみたい。仮に2016年にドナルド・トランプ氏ではなく(あのときの大半の予想どおり――もちろん筆者も含む)、ヒラリー・クリントン氏が勝っていた場合、果たしてどんなことになっていたのだろうか。以下の3つが少なくとも挙げられるだろう。
(1) アメリカ史上初の女性大統領が誕生していた
バラク・オバマという史上初の黒人大統領に続き、性別という「もう1つの天井」が破られていた。そのチャンスを逃したために、アメリカは2020年代になっても「まだ女性指導者が出ていない国」となっている。
(2) その後の「トランプ現象」が不発になっていた可能性がある
ラストベルトなど「忘れられた人々」の不満は、いずれ何らかの形で爆発していたかもしれず、同じ2016年に英国でBrexit(ブレグジット)があったことを考えれば、早晩、どこかで世界的なポピュリズムの連鎖が始まった可能性は否定できない。それでもトランプ大統領という稀有のトリックスターは誕生しなかっただろうし、アメリカの共和党は長い低迷期を迎えていたのではないか。