令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪で起訴された山上徹也被告(45)の裁判員裁判が28日、奈良地裁で始まる。弁護側は殺人罪の起訴内容を認める方針で、量刑が主な争点。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に入信した被告の母親や宗教学者らも弁護側証人として出廷する。弁護側は事件の背景に「宗教虐待」といえる状況があり、あくまで個人的な恨みを晴らすための犯行だったと主張する見込みだ。
被告は捜査段階の調べに、母親が教団に多額の献金をしたことで生活が破綻したと説明。安倍氏は教団の友好団体にビデオメッセージを寄せるなどしており、被告は「教団に恨みがあり、関係がある安倍氏を狙った」などと供述したとされる。
弁護側はこうした動機面を立証するため、母親や宗教学者、教団の献金問題を追及してきた弁護士ら計5人を証人として求め、採用された。家族への教団の影響を詳しくみることで、政治的なテロではないと強調する狙いがあるとみられる。
また使用された手製銃が銃刀法の発射罪の対象になる「拳銃等」にあたるかどうかも争う方針。
一方、検察側証人は安倍氏の隣にいた国会議員や警察官、手製銃を鑑定した専門家、精神鑑定をした医師など計7人。被告の生い立ちにおける教団の影響などは認めつつ、犯行そのものの悪質性、危険性、計画性や、被告が犯行に踏み切った心理などを立証するとみられる。
公判は最大で全19回。11月20日~12月4日の計5回の期日で被告人質問が予定されている。同18日に結審し、判決は来年1月21日。
起訴状によると、4年7月8日、奈良市で参院選の応援演説中の安倍氏を手製のパイプ銃で撃ち、殺害したなどとしている。殺人罪のほか、銃刀法違反、武器等製造法違反、火薬類取締法違反、建造物損壊の計5つの罪で起訴されている。