秋田県湯沢市のJR湯沢駅近くで20日朝に男性を襲い、そのまま民家に入り込んでいたクマについて、市は25日、箱わなで捕獲したと発表した。侵入から6日目にようやく捕獲され、周辺住民は安堵(あんど)する一方で、「別のクマが出没しないか」と心配する声も聞かれた。(秋田支局 橋立大駿、東北総局 是沢拓夢)
市総合防災室によると、25日午前2時15分頃、クマが箱わなに入ったのを市職員が目視で確認。同7時15分頃、箱わなごと軽トラックで運び出した。クマは駆除された。クマは体長1メートル30ほどのオス。家の中は荒らされていたという。
現場は湯沢駅の北東約250メートルの住宅街。クマは20日午前6時20分頃、住人男性(65)を玄関先で襲い、開いていた扉から侵入した。市は市街地での猟銃使用を許可する「緊急銃猟」を検討したが、銃弾がそれた場合に弾を止める「バックストップ」がないため見送り、箱わなを2基設置していた。
佐藤一夫市長は現場で報道陣に「長引いたことをおわびしたい。次の被害が出ないよう対策を講じる」と述べた。幼い息子2人を持つ近くの女性(37)は「またいつ出るか分からない。子供が襲われないか、不安はぬぐえない」と語った。
クマの住宅などへの侵入は各地で相次いでいる。住民が鉢合わせした例や、高齢者施設やスーパーに侵入した例もあり、地域に動揺が広がっている。日本ツキノワグマ研究所の米田一彦所長は「山から市街地に下りてきたクマは、屋外では緊張を強いられる。休める場所を探すうち、住宅などに入ってしまうのではないか」と分析。既に市街地周辺で暮らすクマは「侵入することに抵抗がなくなっている可能性がある」と指摘した。
飼い犬くわえ逃走…宮城
25日は秋田市でランニング中の会社員男性(51)が襲われ、顔などを負傷。秋田県のクマ情報のサイトには、この日だけで約180件(午後8時時点)の目撃情報が寄せられた。北海道苫小牧市のオートキャンプ場にもクマが現れ、利用客44人全員が避難した。宮城県大崎市では、民家の庭で飼われていた犬をくわえて逃げる事案があった。