選挙演説中に元首相が銃撃され、社会に衝撃を与えた事件の裁判員裁判が28日、奈良地裁で始まった。殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)は「私がしたことに間違いありません」と起訴事実を認めた。被告の生い立ちが詳述され、焦点となる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が事件に与えた影響の評価を巡り、検察側と弁護側で主張が対立した。
初公判の法廷に、安倍氏の妻、昭恵さん(63)の姿はなかった。昭恵さんは被害者参加制度を利用するが、今後も出廷はしない予定。代理人が公判で、昭恵さんの思いが記された書面を読み上げるとみられる。
昭恵さんは事件前から、被災地や少年院への訪問など社会貢献活動を続けてきた。9月下旬には、出所者らの支援に取り組む一般財団法人「ワンネス財団」が大阪市内で開いた再犯防止のイベントに登壇。時折涙を浮かべ、「主人が亡くなって悲しいけれど、恨みの感情は持ちたくない」と語った。刑務所で講演したり、殺人を犯した受刑者と文通したりしていることを明かし、「少しでも心に響き、『二度と犯罪を犯さない』と思ってくれたら、私の生きていく意味がある」と述べた。
安倍氏の命日の7月8日を「七転び八起きの日」と呼んでいるという。安倍氏が再チャレンジできる社会を提唱していたことに触れ、「本当に改心したいと思っていれば絶対できるし、それを応援したい」と誓った。