令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の第3回公判が30日、奈良地裁(田中伸一裁判長)で開かれ、証人尋問が続いた。この日1人目の証人として出廷したのは、事件直後に被告を取り押さえた奈良県警の警察官。事件の緊迫した状況を振り返るとともに、制圧された被告が「当たったか」という言葉を発したと証言した。
証人は当時、奈良県警奈良西署の巡査。参院選の地元候補の応援に訪れた安倍氏が演説を行った近鉄大和西大寺駅(奈良市)前の現場で、警護を担当していた。
「ドン」。演説が行われていた交差点内のゼブラゾーンに背を向け、歩道上に立って聴衆の動きを警戒していると、大きな爆発音が聞こえた。振り返ると、少し離れた車道の中央に被告が立ち、そのあたりから白煙が上がっているのが見えた。「取り押さえなければ」。何が起きたかは分からなかったが、被告に向かって突進した。
「バズーカ」のように見えた手製のパイプ銃を両手で構えていた被告。2発目を発射したのは1発目からわずか3秒後だった。その直後に足をつかんで地面に引きずり倒し、ほかの警察官とともに制圧した。被告は抵抗する様子はなかったが、体をつかみながら歩道の方へ移動させた際に「当たったか」とつぶやき、安倍氏の様子を気にするそぶりを見せていたという。
警察官への証人尋問に続いて行われた検察官の証拠調べでは、事件で使われた手製銃が法廷に出され、検察官が掲げた手製銃を裁判員らが確認した。
起訴状によると、被告は4年7月8日、奈良市で参院選の応援演説中の安倍氏を手製銃で撃ち、殺害したなどとしている。
山上被告は初公判で「全て事実。私がしたことに間違いない」と述べ、殺人罪の起訴内容を認めた。最大の争点は量刑で、母親が旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)に入信したことが事件に与えた影響をいかに評価するかが焦点となる。