「ごみ、路上喫煙…もう限界」 過去最多847万の外国人ラッシュに大阪・ミナミが悲鳴

大阪随一の繁華街・ミナミが、インバウンド(訪日客)の激増による「観光公害」に見舞われている。来阪する訪日客の約7割がミナミにある道頓堀周辺を訪れるとされるが、大量のごみや路上喫煙、トイレ不足などさまざまな問題が発生し、対応する地域の努力も限界を迎えつつある。今後も訪日客の増加が予想されることから、大阪市は環境改善に向けて動き出した。ミナミは〝公害〟を克服できるのか-。
国内外から多くの来場者を集めた大阪・関西万博も閉幕した10月下旬、ミナミは平日にも関わらず、観光客や買い物客でごった返していた。「グリコの看板」近くの戎橋や心斎橋筋商店街では、道行く人のほとんどがスーツケースを引いた外国人だった。
大阪府に来た訪日客は昨年、過去最多の約1463万9千人を記録。今年1~6月は開催中だった万博の後押しもあり、前年同期比約23%増の約847万6千人と過去最多となった。大阪観光局によると、来阪した訪日客の約7割がミナミに足を運ぶという。
訪日客の旺盛な消費や宿泊需要が寄与し、ミナミエリアの店舗やホテル用地の地価は上昇。地元に大きな経済的恩恵をもたらしている。
一方で、訪日客の激増によるさまざまな弊害も生まれている。観光公害や「オーバーツーリズム」といわれるもので、道頓堀周辺では、たこ焼きや串焼きを食べ歩きした後のごみのポイ捨てが横行。捨てられたごみがたまった場所には、たばこの吸い殻も多く捨てられ、火の不始末でボヤ騒ぎが起きたこともあった。
道頓堀商店会によると、ミナミを歩くのは訪日客だけではないが、新型コロナウイルス禍があけて訪日客が戻るとともにごみのポイ捨てが目立ちだし、街のいたるところでごみが散乱するようになったという。
見かねた同商店会は令和5年、旅行大手のJTBなどとともに、最新技術を使ったごみ箱をミナミの10カ所に設置。商店会の谷内光拾事務局長(66)は「万博を前に、汚くて恥ずかしい街にしたくなかった。本当の意味での国際観光都市にしたい」と話す。
設置した「IoTスマートごみ箱」は自動でごみを圧縮し、容量の8割までたまると管理者に通知される。IoTには、多様な機器を通信でつなぐ「モノのインターネット」との意味がある。
設置後はポイ捨てが半減し、街中に散乱していたごみはあまり見られなくなった。設置は実証実験のため今年10月までの予定だったが、効果が上がったことから期限の延長が決まった。
一方で、ごみ箱の管理やごみの回収にかかる費用は商店会が賄い、1カ月に約100万円がかかっている。訪日客が増えるとともに捨てられるごみも増加し、朝晩2度の回収でも間に合わなくなってきているという。
谷内さんは「地域だけで、継続して美化活動に取り組むのには限界がある。行政と一体となって進められるとベストだ」と漏らす。
こうした状況を受け、大阪市は8月、ミナミの環境改善に向けて部署をまたいだ検討会議を設置。ごみ問題だけでなく、路上喫煙やトイレの整備、放置自転車など多岐にわたる街の課題解決に乗り出した。
会議の設置理由について、市は「ミナミの環境改善について、地元から悲鳴にも近い要望が届いたため」と明かす。
横山英幸市長は、地域や経済界と連携し、短期集中的に取り組むよう指示。来年度の予算編成で効果的な対策を進める考えを表明した。
横山氏は「地元でフォローしきれない環境美化などの課題がある。ごみやたばこの問題など、行政がやらないといけないことを進めたい」と力を込める。(石橋明日佳)