摘発増える「飲酒自転車」、貸しても客に酒を出してもアウト…居酒屋「自転車の客にも代行使うよう呼びかけ」

自転車の酒気帯び運転に罰則を新設した改正道路交通法が施行され、1日で1年となった。兵庫県警によると、県内の摘発件数は昨年11月から今年9月末までで183件に上り、約4割は事故を起こして発覚していた。死亡事故も起きており、県警は、ルールや危険性の周知を強化している。(浜端成貴)
尼崎市の路上で3月の夕方、派遣社員の40歳代の男が自転車で向きを変えて発進する際にバランスを崩して転倒。その場を通りかかった自転車の70歳代の女性が巻き込まれ、腰を打つなどけがを負った。
男の呼気から基準値(1リットルあたり0・15ミリ・グラム)の5倍のアルコール分が検出され、尼崎南署に道交法違反(酒気帯び運転)容疑などで書類送検された。男は「自宅で缶ビールを飲み、酒を買い足すために出かけた」と供述したという。
昨年11月施行の改正道交法で、自転車の「酒気帯び運転」に罰則が新設された。それまでの罰則対象は、正常な運転ができない恐れがある「酒酔い運転」に限られていたが、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されることになった。
県警は施行から今年9月末までの11か月間で、183件を摘発。摘発数は増加傾向で、初めの3か月は10件未満だったが、今年2月に10件を超え、5月以降は20件台で推移している。
違反者の年代別では、40歳以上が約8割を占めるなど中高年が目立ち、50歳代が50人で最も多く、次いで70歳代が34人。10~20歳代は25人だった。
死亡事故も起きている。淡路市では8月、飲食店経営の男性(77)が店を閉めて自転車で自宅に帰る途中に側溝に転落して亡くなった。血液からアルコール分が検出され、店で酒を飲んで飲酒運転していたとみられている。
改正道交法では、飲酒した人に自転車を貸す「車両提供」のほか、自転車で帰宅する客に酒を出す「酒類提供」にも罰則が設けられた。県内では9月末までに摘発例はない。
県警は、同期間に自転車の「酒酔い運転」でも12件摘発している。飲酒運転が発覚するケースは一部とみており、ルールを周知する取り組みを続けている。
自転車の利用者が多い尼崎市内では10月下旬、尼崎南署員が飲食店や路上で啓発チラシを配った。居酒屋を営む男性(53)は「車だけでなく、自転車で来るお客さんにも代行運転を使うように呼びかける」と話していた。
県警交通指導課の佐子昭子次席は「自転車は気軽に乗れるが、ちょっとした気の緩みが取り返しがつかない事故につながる。取り締まりと啓発に取り組んでいく」と話している。