国史跡内の土地を無許可で造成、古墳損壊し石室の一部出土…奈良県上牧町長「申し訳ない」

奈良県上牧町は4日、国史跡・上牧久渡(くど)古墳群の整備工事で、文化庁から許可を受けずに史跡内の土地を削って造成し、これまで確認されていなかった古墳を損壊して石室の一部を出土させた、と発表した。阪本正人町長は記者会見し、「文化財の保存・整備事業の信頼を揺るがすことになり、申し訳ない」と陳謝した。
同古墳群は8基の古墳で構成。2015年に国史跡に指定された。整備工事は23年度に始め、文化庁の許可を得て24年11月に史跡内の工事に着手した。しかし、許可通りではパワーショベルの作業スペースが取れず、無許可で斜面を削って造成したという。
町教育委員会の吉川信一郎社会教育課長は「業者と協議した町の担当職員が許可が必要と思っていなかった。認識が甘かった」と説明している。
25年にも無許可で造成工事を行い、10月3日に最大で長さ1・3メートルの石6個が出土。工事に必要な町職員の立ち会いもなく、業者は町の指示で出土場所から石を動かしていた。同月9日になって出土した石が周辺の古墳の石室と同様の石で、未確認だった9基目の古墳だと判明。県文化財課に報告し、県の指摘を受け、町は斜面を削る造成が無許可だと気づいたという。
町は今後、新たにわかった9基目の古墳を調べた上で、石を埋め戻す方針。吉川課長は「認識が不十分で、文化財を不適切に取り扱ってしまった。今後は文化庁や県の指導を受け、適切に対応したい」と話している。