山上被告の手製パイプ銃「殺傷能力」実験で下限の12倍超と確認 13日には母の証人尋問

令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判第6回公判が6日、奈良地裁(田中伸一裁判長)で開かれ、奈良県警科学捜査研究所の男性研究員の証人尋問が行われた。研究員は被告が作ったパイプ銃の構造や威力などの鑑定を担当。事件で使われた銃の発射実験では、殺傷能力の下限値と比べ、最大12倍超の威力が確認されたと証言した。
被告は4年7月8日午前11時半ごろ、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で、パイプ銃1丁を2回発砲したとされる。自宅マンションの家宅捜索ではほかにも6丁のパイプ銃が見つかっており、いずれも被告が自作したとみられる。
証言によると、パイプ銃は引き金にあたるスイッチを押すと、バッテリーから実包に通電され火薬に着火、実包内の6個の鉛玉が飛び散る仕組み。安倍氏に対して使われた銃は2本のパイプが束ねられており、計2回の発射が可能だった。
科捜研はこの銃と、押収品の火薬を使って被告の供述通りに再現した実包を用い、4度の発射実験を実施した。その結果、弾速は秒速200メートル台で、威力は殺傷能力を有する下限の数値より8~12倍ほど大きかった。ほか6丁も全て弾丸を発射でき、「殺傷能力を有する」と確認された。
これまでの公判によると、被告は当初、安倍氏の約7メートル後方で発砲したものの、6個の弾はいずれも安倍氏に当たらず、約5メートルに近づいた2発目で5~6個が安倍氏に当たった。実験では、6個の弾は5メートルの距離であれば約10センチ四方、7メートルであれば約20センチ四方に着弾し、この距離でもベニヤ板4枚(計16ミリ)を貫通するほどの威力があると分かったという。
また、銃刀法の発射罪が適用されるのは「拳銃」や「砲」を発射した場合で、検察側は安倍氏を撃ったパイプ銃が砲に当たると主張している。砲は口径20ミリ以上の武器だとされるが、法律上明確な定義はなく、弁護側は散弾ではなく、直径20ミリの大型弾を撃つ能力も要件だとして発射罪の成立を争っている。研究員はこの点について、パイプ銃の性能や耐久性を踏まえ、大型弾も「発射できる」と述べた。
第7回公判は13日午後に開かれ、旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)に入信した被告の母親の証人尋問などが行われる。