クマ目撃が前年の「20分の1」に激減の県も…木の実の豊作が影響か

冬眠に備え、餌を求めて人里に下りてきたクマによる人的被害が東日本を中心に続発している。ただ、岡山県内では今季、クマの目撃情報が例年に比べて激減。餌となる木の実が山に豊富にあることが要因とみられるが、県は「誘引物があればクマは人里に寄ってくる」とし、放置果樹の伐採など対策の徹底を呼びかけている。(西田周平)
県によると、県内に生息するクマ(ツキノワグマ)は兵庫、鳥取両県内の個体とともに「東中国地域個体群」と呼ばれるグループを形成しており、現在3県で計763頭いると推定される。
クマは冬眠前と冬眠明けに餌を求めて行動を活発化させるため、例年、春と10、11月に目撃情報が増える傾向にある。ところが、県内の今年10月の目撃情報は2件しかなく、前年同月の38件に比べて激減。2019年以降、21~45件で推移していただけに、目立って減少している。
県の堅果類豊凶調査(8月時点)によると、今年はクマの餌となる木の実のうち、ブナは「凶作」だったものの、ミズナラとコナラは「豊作」。このデータから、県自然環境課の今井竜吾総括副参事は「山に餌が豊富にあるため、今季はクマが人里に姿を現していない可能性がある」と推測する。
一方で、「豊作だから絶対に安心というわけではない」とも念を押す。というのも、20年調査ではブナが「凶作」でコナラが「並作」、ミズナラは「豊作」と今年と似た傾向だったが、同年の目撃情報は10月29件、11月も37件あったからだ。
さらに、クマは過去に人里で食べた果樹などの味を覚え、同じ味を求めて再び姿を見せるケースもあるという。
誘引物になるのは、果樹や生ゴミ、ペットフードなど。クマを寄せ付けないためにも、放置している果樹は伐採し、果実も残らず収穫、そのほかの誘引物は家の外には置かないといった対策を呼びかける。
山に入る際には、クマと遭遇しないために鈴やラジオ、スマートフォンなどで音を出し、人がいることを知らせることも有効という。
クマによる被害を防ぐため、13日からは警察官によるライフル銃でのクマの駆除が可能となったが、今井総括副参事は「目撃情報は少ないが、県内の山にも一定数のクマがいる。遭遇してしまうと命の危険に直結するので、『出会わない』『引き寄せない』対策を徹底してほしい」と話している。