人口減により経営が厳しさを増している市町村の上下水道事業について、国土交通省は複数の自治体による統合・広域化を国主導で進める方針を固めた。来年度、新たな補助制度を創設し、数十万人規模や県単位での統合・広域化を促す。施設の統廃合や一元管理によりコストを削減し、管路などの老朽化対策を進めるとともに、さらなる人口減を見据え経営基盤の強化を図る。
上下水道は原則、各自治体が整備・経営しており、上水道(簡易水道を含む)の事業者は約3500、下水道は約1500ある。
国交省によると、全国各地で管路の老朽化が進みつつあるが、人口減による利用料収入の減少に、資材費や人件費の高騰が重なり、管路の更新が滞っている自治体も出始めている。更新を計画通り進めるため、利用料を大幅に引き上げる動きも各地で相次いでいる。小規模自治体では専門の技術職員も不足しており、単独での経営がより難しくなっている。
新たな補助制度は、統合・広域化に伴う浄水場や下水処理場などの建て替え・新設や、自治体間の管路の連結などが対象で、支給割合は上水道が3分の1程度、下水道が2分の1程度となる見通し。支給要件は「統合・広域化による域内人口が10万人以上」などとする方向で検討している。
国交省は、統合・広域化により〈1〉施設の統廃合による維持・管理費の削減〈2〉管路の更新・修繕の共同発注による経費削減〈3〉不足する技術職員らの確保〈4〉上下水道料金の抑制――などが期待できるとしている。
同省によると、複数の自治体による統合・広域化は、上水道では財政難を背景に過去10年で群馬県や香川県などで約10件あるが、下水道は例がないという。
同省幹部は「将来的には人口減がさらに進み、更新が必要な管路も増える。複数自治体での統合・広域化に加え、民間業者への業務委託や、過疎地での浄化槽の普及なども進めていく必要がある」としている。
政府は、新設する補助金の関連費用を来年度当初予算案に盛り込む方針。