秋田県能代市中心部の商業施設「イオン能代店」に16日、クマ(体長約80センチ)が入り込み、店内で駆除された。従業員らがとっさの判断で売り場にバリケードを築いてクマを閉じ込め、店内の客は無事避難した。一方、鹿角市花輪の田んぼで頭や右手などに傷がある高齢の女性が死亡しているのが見つかり、県警はクマに襲われた可能性を視野に調べている。
「食事中に中断してもらうのは申し訳なかったが、安全を優先して避難してもらうことにした。物々しい雰囲気だった」。同店3階で飲食店を経営する男性(61)が緊迫した状況を振り返った。
能代署によると、「クマが店内に入ってきた」と同店の従業員から110番があったのは午前11時20分頃。クマは家具売り場にとどまったため、従業員らがパーティションなどで封鎖。クマは吹き矢で麻酔をかけられ、入り込んでから約2時間半後に駆除された。
クマの侵入を受け、従業員と警察は十数人態勢で、1階の出入り口や駐車場まで客を誘導し、正午頃には客全員の避難を確認した。店頭には「熊出没のため営業しておりません」とはり紙が掲示された。
近くの旧料亭金勇は、正午から日本庭園の見学を一時中断。40歳代のスタッフは「紅葉観賞や七五三の撮影に来ていた客もいた。晴れていたのに残念だった。捕まったと聞いて安心している」と話した。
近くで飲食店を経営する50歳代男性は「まさか、ここに出るとは。ゴミ捨てなど気をつけないといけない」と気を引き締めていた。
一方、同日午後3時25分頃には、鹿角市花輪で「田んぼに人が倒れている」と近隣住民から110番があった。鹿角署の発表によると、高齢女性があおむけで倒れていて、救急隊がその場で死亡を確認した。同署は傷の状況からクマによる被害の可能性を視野に身元や死因を調べている。同署は周辺にパトカーを巡回させて警戒している。