歴代2位となる82%(JNN調査)という高支持率で好スタートを切った高市早苗・首相。政権を盤石にするために、靖国神社を参拝するプランが浮上しているという。もしも実現すれば、2013年12月26日に参拝した安倍晋三・元首相以来、12年ぶりの現職総理の参拝となる。その舞台裏を追った。【全3回の第2回】
キーマンは安倍政権の首相補佐官
高市参拝実現のキーマンと見られているのが、安倍政権で総理首席秘書官兼首相補佐官を務め、「影の総理」の異名を取った元経産官僚の今井尚哉氏だ。
高市首相は今井氏を”三顧の礼”で特命担当の内閣官房参与に招き、首相の最大のブレーンと見られている。
実は、今井氏は安倍氏が首相に返り咲いた直後に靖国神社を参拝しようとしたのを強硬に反対して止めた人物でもある。
『中央公論』(今年3月号)の対談で、当時の官邸でのやりとりを今井氏がこう振り返っている。
〈冗談じゃない、と思いましたよ。中国は安倍さんが靖国に行くことは織り込み済みとしても、アメリカが反対しますから。(中略)どう諫めても安倍さんは曲げないんです。執務室に何度も説得に行って、5回目には「ふつつか者でございました」と辞意を伝えました。とてもお支えできません、と。〉
結局、安倍首相のほうが折れ、参拝は1年後に行なわれた。
だが、時のオバマ政権が黙っていなかった。参拝直後に在日米国大使館が「米国は日本の指導者が日本の近隣諸国との緊張を悪化させる行動を取ったことに失望している」という異例の声明文を発表、キャロライン・ケネディ駐日大使も「地域情勢を難しくするような行動は建設的ではない」と批判し、今井氏は中韓だけでなく、米国との事後処理に奔走した。
その経緯を考えれば、高市首相が参拝を検討したとしても、今井氏が”ブレーキ役”となると見るのが自然だ。総理の最側近となる政務担当首相秘書官に前経済産業省次官の飯田祐二氏を推したのも今井氏とされ、高市首相に意見を通す体制になっている。
ただ、「安倍政権当時とでは海外の政治状況が全く違う」(官邸筋)との見方があるのも確かだ。
そもそも、今井氏が安倍首相の参拝に反対した最大の理由はオバマ政権が反対し、日米関係が悪化することを予測していたからだ。中国の対応についてはこう語っている。
〈たとえば靖国参拝で中国がどれだけ反発しても、「こいつとは長く付き合わなければならないから、嫌でもこの政権と交渉するしかない」と思わせることが大事なんです。交渉の現場で何を言っても、相手は「本当に国会を通せるんだな?」と足元を見てきますから、「通せるよ」と言える政権の強さがあれば、在外公館のアタッシェ(外交使節団員)たちは自信満々に振る舞えるんです。〉(前掲の『中央公論』)