諸説あった松本城天守の創建は1596~97年頃、柱に使われた木材の年輪調査し判明…市は公式見解切り替えへ

長野県松本市は、これまで諸説あった国宝・松本城天守の創建時期が、科学調査によって安土桃山時代の末期にあたる1596~97年頃と判明したと発表した。専門家が、柱などに使われた樹木の年輪パターンから伐採年を割り出す「年輪年代法」で導き出した。
調査は市から委託された奈良文化財研究所の光谷拓実名誉研究員と名古屋工業大の麓和善名誉教授(建築史)が2022~24年度に実施。城の柱や梁(はり)を調べた。
天守の創建時期について市はこれまで1593~94年頃を公式見解としてきた。調査の結果、天守の1、3、4階の柱に使われたヒノキが1596年に伐採されたものと判明。最上6階の柱の伐採年も同時期とわかった。石垣も含めた創建時期は、1594~97年頃だという。
松本城は、天守と月見櫓(やぐら)、辰巳附(たつみつけ)櫓、渡(わたり)櫓、乾小(いぬいこ)天守の5棟から成る。月見櫓も梁に使われたツガの伐採年が1626年とわかり、こちらも「3代将軍徳川家光を迎えるため1630年代に増築された」としてきた市の見解と異なる結果になった。麓名誉教授は「創建年代がはっきりしたことで、文化財としての価値は高くなった」と話す。
臥雲 ( がうん ) 義尚市長は「科学的な論拠が示された。総合的な検討の上で市の公式見解を切り替える」としている。