「AI生成画は著作物」、無断複製の疑いで男を書類送検へ…千葉県警が全国初の摘発

生成AI(人工知能)で作られた画像を無断で複製したとして、千葉県警は20日にも、神奈川県大和市の男(27)を著作権法違反(複製権侵害)の疑いで千葉地検に書類送検する方針を固めた。起訴を求める「厳重処分」の意見を付ける。AIで作られた画像に著作権があると判断し、同法違反で摘発するのは全国初とみられる。

制作 指示2万回
捜査関係者によると、男は2024年8月下旬頃、千葉県の20歳代男性が画像生成AI「ステーブル・ディフュージョン」を用いて制作した画像を無断で複製し、男性の著作権を侵害した疑い。男は複製画像を、自身が販売した書籍の表紙に使用していた。
同法は、思想または感情を創作的に表現した文芸や美術などを「著作物」と定義する。文化庁が示す「AIと著作権に関する考え方」によると、AIの生成物が著作物に当たるかどうかは、AIに対するプロンプト(指示)の分量と内容、生成の試行回数などを総合的に考慮して判断される。
男性は読売新聞の取材に「プロンプトは2万回以上だった」と話している。県警は、男性が詳細に指示し、作り出された画像を確認しながら指示の修正も繰り返していたことなどから、最終的に生成された画像が著作物に当たると判断した。
著作権有無 国内判例なく…海外は見解割れる
AIの生成物を著作物とみなすかどうかは、国内では判例がなく、結論は出ていない。海外でも見解が割れている。
米国著作権局は2023年2月、生成AIで作成した漫画のイラストについて、著作権登録の申請を却下した。生成AIがどのようなものを作成するか予測は不可能で、「人がコントロールしているわけではない」と判断。制作に要した時間や費用は、著作権が生じる基準にならないとした。
中国では、生成AIで作った画像の無断使用は著作権侵害に当たるとして、画像の作者が使用者を訴えた訴訟があり、北京インターネット法院は23年11月、画像を著作物と認める判決を出した。「原告(作者)はプロンプトの選択などで相当の知的労力を費やした」と評価した。
AIと著作権に詳しい福井健策弁護士(第二東京弁護士会所属、米ニューヨーク州弁護士登録)は「プロンプトで具体的な指定を十分にしていれば著作物になり得る」とみる。
福井弁護士によると、生成AIにあいまいな指示をすれば生成物は多様になり、作り出されるものを予測するのは難しくなる。一方で、詳細で具体的な指示をすればするほど、生成物は作者の創意に沿い、意図した表現の画像などが作り出されるという。著作権の有無を判断する際は、「人が結果を具体的に予測して指示を出しているかどうかが重要だ」と話している。