安定感に定評がある林芳正総務相が、ここへきて危うくなっている。
原因は「政治とカネ」の問題だ。週刊文春(11月13日号)が昨秋の衆院選を巡る、林陣営の選挙費用の不正疑惑を報道。陣営の選挙運動費用収支報告書には、計269人に約316万円の「労務費」の支払いが記載されている。主な支出先は林大臣の選挙区(山口3区)内の住民で、一部の名目は「ポスター維持管理費」になっているが、複数の住民が「維持管理してない」と証言。実際はしていない労務への報酬を有権者に支払えば事実上の買収行為に当たり、公職選挙法違反の恐れがある。
加えて不自然なのは、収支報告書上は報酬を受領したと記された複数の有権者が、「労務はしておらず報酬も受け取っていない」との証言をしたことだ。つまり、林陣営は領収書を勝手に発行し、実態のない「労務費」を選挙費用として計上した疑いがある。
■地元山口はピリピリムード
この点は、朝日新聞(15日付)が指摘すると、読売新聞(19日付)も報道。さらに、21日は林の地元・山口の地方紙、中国新聞も〈報酬未受領なのに領収書〉との見出しで報じた。「(領収書に記載された筆跡は)私のものではない。一体誰が書いたものだろうか」といった地元住民のコメントを掲載している。大手紙に加え、地元紙にまで書かれてしまったことは、林大臣にとって痛手だ。山口県政関係者が言う。
「今回の一件は完全にアウトでしょう。地元では皆、口には出さないが『これはダメ』と思っている。驚くのは、複数の地方議員が名前出しで文春にコメントしていることです。普通なら、取材を受けてもダンマリを決め込んで終わり。しゃべってもメリットはありませんから。県政はいまだに故・安倍元首相系と林系の勢力が争っている。反林派が情報を出しているのかもしれません」
問題はまだまだ収束しなさそうだ。
「国会でも複数の野党議員が追及しています。林さんは防戦一方で『詳細を承知しておらず確認を進めている』を連発。調査が終わり次第、説明するとしていますが、果たしてどう言い訳するのか。『勘違いでした』『誤記載だった』で済まされる内容だとは思えません」(官邸事情通)
誕生日が1月19日であることから、林大臣は「政界の119番」と呼ばれ頼られているが、今度は自らが助けを求めざるを得なくなるかもしれない。
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