東京都足立区梅島の国道で盗難車が暴走して11人が死傷した事故で、車が横断歩道を渡っていた女性をはねた際、赤信号を無視していたことが捜査関係者への取材でわかった。警視庁は、車の窃盗容疑で逮捕した同区の職業不詳の男(37)が時速約70キロで横断歩道に進入したとみて、道路交通法違反(ひき逃げ)や自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)容疑でも捜査している。
現場は足立区役所前の交差点で、車は横断歩道でフィリピン国籍の同区関原、会社員テスタド・グラディス・グレイスさん(28)をはねた後、歩道で同区栗原の無職杉本研二さん(81)ら4人をはね、さらに車道に出てトラックに追突した。この事故で、テスタドさんと杉本さんが死亡し、男女計9人が重軽傷を負った。
捜査関係者によると、防犯カメラ映像の解析で、車が現場の交差点に赤信号を無視して進入していたことが判明した。ブレーキ痕はなかったという。テスタドさんは青信号で横断歩道を渡っていた。
車はトヨタの高級セダン「クラウン」の中古車で、事故の約2時間前に現場近くの自動車販売店から盗まれたものだった。男は7月と11月中旬に計2回、同店を訪れて車の購入を申し出たが、その後、代金の支払いに来なかったという。
男は調べに「試乗するためだった」と容疑を否認。「クラウンに乗りたかった。車が施錠されておらず、車内に鍵があったのでエンジンをかけた。車で店の周りを一周し、神奈川県秦野市の山に向かう途中で事故を起こした」とも供述している。同庁は刑事責任能力の有無を慎重に調べている。
同庁は25日、男の自宅を捜索し、車のパンフレットなどを押収した。26日、男を窃盗容疑で東京地検に送検した。