2025年の脳死下での臓器提供が11月30日で134件となり、年間で過去最多となったことが、日本臓器移植ネットワーク(JOT)への取材で分かった。臓器移植についての国民の理解や脳死判定を行う医療機関への国による財政支援が進んだことなどが背景にあるとみられる。海外との比較では、依然として低水準にとどまっており、増加に向けたさらなる取り組みが求められている。
JOTは29日、福岡市立こども病院に入院していた6歳未満の女児が、今年133件目となる改正臓器移植法に基づく脳死と判定されたと発表した。23年の132件を上回り、過去最多を更新した。30日には、18歳未満の男子が脳死判定され、134件となった。
脳死となった人からの臓器移植を可能とした臓器移植法が1997年に施行された当初は、本人の意思表示などが必要で、年間の提供件数は数件にとどまっていた。2010年に家族の承諾だけでの提供を可能とする改正法が施行され、増加傾向が続いていた。
厚生労働省は、臓器提供の経験が豊富な医療機関から、経験の浅い医療機関に医師らを派遣する事業や臓器提供への診療報酬の加算などを進めてきた。
ただし、24年の人口100万人あたりの臓器提供件数は1・13人で、 米国の49・70人や韓国の7・75人より大幅に低いのが現状だ。
日本移植学会理事長の小野稔・東京大教授は「命が救われる移植医療の意義が浸透してきた。自分や身内が脳死になった時に、『貢献したい』という思いがさらに広がれば」と話す。