厚生労働省が4日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会で、出産にかかる費用の無償化に向け、分娩(ぶんべん)費用を公的医療保険で全額賄う案を提示することがわかった。出産の経済的不安を軽減し、少子化対策を拡充する狙いがある。早ければ来年の通常国会に関連法案を提出する方針で、詳細な制度設計を詰め、実施は2027年度以降となる見通しだ。
少子化対策として支給されている出産育児一時金(50万円)に代わり、実施される。出産費用は現在、医療機関が自由に価格を設定しているが、物価高などで年々上昇している。24年度の正常分娩の平均出産費用は51万9805円で、東京都は平均で64万円を超えるなど、地域差が大きいことも問題となっていた。
保険適用により、全国一律の公定価格を設定することで、居住地や利用施設による不公平感をなくすとともに、費用の透明化を図る。通常の保険診療でかかる3割の自己負担はゼロにする。分娩にかかるコストは妊婦の個人差が大きいため、同省は分娩に対応した数に応じて各医療機関に診療報酬を支給することを検討している。
帝王切開などの異常分娩や妊娠合併症への対応など、保険適用済みの診療行為は、現行の3割の自己負担を継続する方向だ。出産後に出される「お祝い膳」やマッサージ、エステ、写真撮影など出産に付随するサービスは、原則として全額を自己負担とする。
6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」では、「26年度をめどに標準的な出産費用の自己負担の無償化に向けた対応を進める」と明記していた。