158kgのヒグマに襲われ、全身140針を縫う大けがを負った男性が語る一部始終「最初はクルマにはねられたと…」

クマ被害が過去最悪を記録し、死者13人・負傷者197人という異常事態に陥っている今年。どんぐり不作や人馴れの進行、冬眠しない個体の増加により、市街地での遭遇リスクはかつてないほど高まっている。とくに興奮状態のアーバンベアは警戒心が弱く、人を見つけるや否や襲いかかる危険性がある。そんな“今そこにある脅威”を体験した被害者が、突然の襲撃とその後の壮絶な現実を語った。

◆「気づいたときには抵抗のしようもなかった」

「最初はクルマにはねられたと思い、次に犬かな?と思ったのですが……気づいたときには抵抗のしようもなかった」

そう語るのは、’21年6月に連続して4人が襲われた札幌市東区ヒグマ襲撃事件の被害者の一人、安藤伸一郎さんだ。出勤中に158kgの雄のヒグマに背後から襲われ、全身140針を縫う大けがを負った。

「押し倒され、背後を確認したら目の前にクマの口が迫っていてとっさに顔をガードしたんです。その腕をまれながら体を丸めて耐えました」

◆一命を取り留めたものの…

幸運にも巡回中のパトカーが駆けつけたことで、ヒグマは逃走。安藤さんは、すぐさま救急搬送された。

「最初の体当たりで肋骨が6本折れて、肺に穴が開く肺気胸になり、腕と背中の傷は神経が見えるほど深いものでした。6か月の入院とリハビリを経て退院しましたが、膝と肋骨の痛みが消えずに、今も通院しながら痛み止めの薬と電気治療をしないと歩くのもままならない」

◆クマ被害の治療費は100万円以上

その後復職したが、後遺症の影響で出勤日数が減り、収入も減ってしまったという。

「100万円以上の治療費がかかっていますが、公的な支援は受けられませんでした。障害者手帳の交付を求めても、一番軽度の7級しか認められなかった。クマ被害に遭ったら、すべて自腹という現実は何とかしてほしい」

そんな安藤さんは今でもクマに怯えながら過ごしている。

「外出時は行政のSNSなどでクマ出没の情報を必ず確認します。そのうえで、クマが近づかない明るくて人通りの多い道を通る。クマ被害の教訓から、万が一目撃したら電柱や柵などの障害物に身を隠すことを念頭に入れています。ただ、襲われてしまったら打つ手はない。誰にも制止できませんから……クルマで突っ込んできてくれ!と助けを呼ぶほかないでしょう……」

体験者のみが知る身の守り方を胸に刻みたい。

◆クマから身を守るための姿勢

①両手・両腕で頭を包み込むようにガード

②背中の防御力は前面の7倍とされる

③両ヒザで脇腹をガード

※週刊SPA!12/9号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[クマvs人間]ガチンコ撃退術]―