――大臣、左側におられる2人ですけれども。
画像を示した質疑に対して答弁に立ったのは、林芳正総務大臣(64)だ。“買収疑惑”はついに国会へ。
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NHKや朝日新聞なども報道
11月20日、衆議院総務委員会で林氏に問われたのが公職選挙法違反疑惑だ。
昨年の衆院選で、269人に計約316万円もの「労務費」を支出した林氏陣営。そのうち「ポスター維持管理費」名目で金銭を受け取った地元議員や住民が実際には「維持管理」はしておらず、「遊説で頭を下げた」「電話作戦をした」などと「週刊文春」の取材に証言。11月13日号から 3号連続で報じてきた 。
「NHKや朝日新聞なども実態のない支払いが記されている疑惑を報道しました」(社会部デスク)
「確たることを申し上げることは難しい」
冒頭、共産党の辰巳孝太郎議員が指摘したのが地元市議らによる選挙手伝いだ。
「林氏に代わって遊説をした妻・裕子氏が投稿した動画に、吉村武志下関市議らが選挙カーの前で頑張ろうコールをする様子が映っていた。吉村氏は同日に労務費1万円を受け取っており、判例上、選挙運動と同日に金銭を支払うと公選法違反の疑いがある」(同前)
画像を見た林氏は、
「拝見した限り、その両名ではないかと思われます」
なおも辰巳氏は「選挙運動をやっていないどころか、マイク握って頑張ろうをやっている」「動かぬ証拠」と追及。林氏は「確認作業を進めておるところ」「意図していなかった」と繰り返し、立憲の山登志浩議員に臨時国会中の報告を求められると「確たることを申し上げることは難しい」と明言を避けた。
この林氏の労務費バラマキ問題を巡り、「週刊文春」は今回また新たな疑惑を提示する。
4年前の選挙でも「疑惑の労務費」が…
昨年の衆院選より前、2021年衆院選の林氏陣営の「選挙運動費用収支報告書」を入手。そこでも同じように大量の労務費支出があり、計199人に242万円の労務費を配っていた。
領収書の形式は昨秋と共通し、「ポスター維持管理費」という“買収疑惑”の隠れ蓑になったのと同じ記載もある。4万5000円など高額のものも。
つまり、昨年のみならず4年前にも疑惑の労務費があったのだ。公選法違反(買収・虚偽記入)は3年で時効とはいえ、同じ手口の常習性を疑わざるを得ない。
更に不可解すぎる事例もある。公示前日の10月18日付けで、〈河村建夫〉とサインがある1万円の労務費の領収書を添付、計上。労務内容は「ハガキ筆耕」。職業欄は「無職」だが、この河村氏は記載の住所などから元官房長官のことで間違いない。
「21年は林氏が参院から衆院に鞍替えし、河村氏の地盤だった山口3区から強引に出馬。公認を巡って自民党が割れかけ、河村氏が政界を退いた」(政治部記者)
支出日の18日は、河村氏が引退会見を開いた日だが、なぜか林氏陣営の労務費として1万円を受け取ったことになっている。
当事者はどう答えるか
河村氏に心当たりを尋ねると、「いや、これは自分の字じゃあない。事務所で誰かが代筆したのか……」。自身が労務を手伝った記憶は当然ないという。実態がなければ虚偽記入だ。
4年前の選挙でのカネ配りの実態について、当時の林氏陣営の会計責任者を直撃すると、
「ポスターが剥がれたらいけないから期間中見回ってくださいと頼むお金で、大体1万円。公選法の細かいところは選管に聞いてほしいが、必要なお金だと思う」
しかし、4万5000円など同氏の言う「1万円」の相場と離れた領収書の存在を提示すると、「あれっ、これはおかしいね」。
林氏には、選挙を所管する総務大臣として説明すべきことが多すぎる。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年12月4日号)