青森県沖を震源として発生した8日の地震では、過去の巨大地震時と同様、SNS上でデマが広がっている。東北地方を中心に記録的な人的被害が出ているクマと結びつけたものや、東日本大震災の津波映像を引用した海外発とみられる投稿が確認できる。専門家は公的機関で事実を確認するなど冷静な対応を呼びかけている。
クマが地震を予知?
8日深夜の地震発生後、X(旧ツイッター)などでは「冬眠中のクマが揺れで目を覚ましてパニックになり、暴れる」などと指摘する投稿が相次いだ。また、今年のクマの活発な動きを「地震の予兆を感じ取っていた」とする根拠不明の投稿も確認できる。
東京農業大の山崎晃司教授(動物生態学)は、クマが地震を予知していたかのような投稿を「ありえない」と完全に否定。冬眠については、「揺れなどの刺激で、一時的に覚醒することはあるが、またすぐに眠る」と説明する。
今後の避難時にクマと遭遇する不安を抱えている住民もいるとみられるが、山崎氏は、この点も「これまでに出没があった地域は注意が必要だが、この時期は大半が冬眠に入っているので大丈夫だ」との見方を示す。
3・11の「予告」
今回の地震で気象庁は、今後1週間は巨大地震の発生可能性が高まるとして「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表。最悪の場合、東日本大震災級の地震が起きるとするが、発生確率は1%程度だ。ただ、SNSでは、注意情報を巨大地震が到来する「予告のようなもの」とする誤った認識が目立っている。
東日本大震災では、発災2日前の3月9日にM7・3の地震が発生したことを例に「今回も2日後が本番?」などと不安をあおるような内容も。政府が近く、人工的に地震を起こすといった言説も広がっている。
外国からのフェイク
海外発とみられる投稿で、明らかなフェイクも散見される。英語で「マグニチュード7・6(※正式には7・5)の地震が日本を襲った」とする説明文に、日本国内外の過去の地震映像を組み合わせたものだ。東日本大震災の津波の様子を引用したものもあり、この投稿は2万回以上視聴された。いずれも投稿主は海外の人物とみられる。
日本大危機管理学部・福田充教授(危機管理学)は「災害時は、人々があいまいな情報を確かめようと話し合い、結果的に誤情報が拡散するという構造がある」と指摘。今回は後発地震注意情報という目新しい言葉も登場し、「耳慣れない現象はデマにつながりやすい。国民は冷静に政府やメディアなど公的機関の情報を頼るべきだ。公的機関側は今回は特に丁寧に説明を尽くす姿勢が求められる」としている。(内田優作、長谷川毬子)