国際電話を悪用した特殊詐欺の被害を防ごうと、警察庁は11日、スマートフォンへの国際電話をブロックする民間事業者のアプリを「警察庁推奨」として認定する制度を始めると発表した。民間のアプリに警察庁がお墨付きを与えて利用促進を図るのは初めて。来年3月ごろまでに推奨アプリを決定する。
警察庁によると、今年1~10月に特殊詐欺に悪用された電話のうち76%は、「+1」や「+44」といった国番号から始まる国際電話だった。海外拠点から警察官をかたってだます手口が多発していることなどから増加傾向にあるという。
また、詐欺の電話は固定電話と携帯電話にかかってくるが、携帯電話へかかる割合が増加傾向にある。詐欺グループが被害者に最初に接触する手段が電話だった場合、そのうち携帯電話にかかった割合は、2024年の25%から、25年は1~10月で41%と増えている。
そこで警察庁は「特殊詐欺の被害防止には、携帯電話にかかる国際電話の遮断が効果的」とし、「警察庁推奨アプリ」の認定制度を新設する。
対象は、国際電話と、国内で過去に詐欺に使われた電話番号の発着信を遮断でき、利用者が無料で使えるアプリとする。同様の民間のアプリは有料版が既にあるが、事業者が利用者に無償提供することで普及を図る。
警察庁が発信する最新の手口などの防犯情報を通知できる機能を備えることも条件とする。事業者には、人工知能(AI)といった最新技術の活用を求めるほか、詐欺の電話番号を蓄積してデータベースを構築することも期待する。
米アップルが提供するスマホの基本ソフト「iOS」については、国際電話の一括遮断ができない仕様のため、詐欺の電話番号を遮断できるアプリを対象とする。
推奨アプリは、警察庁のロゴやエンブレムなどの使用や「警察庁推奨」との表記が可能。企業にとっては、社会貢献によるイメージ向上がメリットになる。
警察庁は11日から事業者の募集を始めた。採用した事業者には、アプリの効果を把握するため、利用者数や詐欺電話の遮断件数を定期的に報告してもらう。【深津誠】