「北朝鮮で韓国への憧れ高まっている」脱北者ラジオ代表が現状説明 拉致問題国際セミナー

北朝鮮による拉致被害者の家族会などは12日、参院議員会館(東京都千代田区)で被害者奪還の方策などを考える国際セミナーを開催した。民間の北朝鮮向けラジオ放送局「自由北韓放送」(韓国)の運営者らも参加。事態の進展に向け、国際社会に対する働きかけを強化する必要性などを訴えた。
高市首相で「解決の絶好の機会」
横田めぐみさん(61)=拉致当時(13)=の弟、哲也さん(57)は、「首相が高市(早苗)さんになったことは拉致問題解決の絶好の機会だ」とし、取り組みの加速を期待。「北朝鮮の冬は日本よりさらに寒い。私たちの同胞が住まわされていることは我慢できず、なんとか救い出したい」と述べた。
脱北者の有志が2004年に立ち上げ、北朝鮮の人民向けに韓国など外部社会の情報を伝えている自由北韓放送の李始瀛(イ・シヨン)代表は、北朝鮮国内の最新情勢を説明。消息筋の情報として、従来は豊かだった国境付近地域で餓死が多発し、闇市場にも物品が流通しなくなっているとし、「北朝鮮人民の頭の中では韓国への憧れが高まっている」とした。
「独裁者にラブコール」と批判
李氏によると、韓国では南北の緊張緩和を標榜(ひょうぼう)する李在明(イ・ジェミョン)政権の下、公的機関による北朝鮮向けラジオ放送が相次いで停止に追い込まれているという。李氏は韓国の現政権を「北朝鮮人民の知る権利を無視し、独裁者にラブコールを送っている」と批判した上で、「これからは自分たちのような民間団体の役割がさらに重要になる。変わらずに一生懸命戦っていく」と力を込めた。
セミナーでは、産経新聞の久保田るり子客員編集委員も登壇し、北朝鮮国内では韓国文化などの情報流入などに伴って金正恩(キム・ジョンウン)体制への不満が高まり「崩壊が始まっている」と指摘。拉致問題解決のために、「北朝鮮の弱みを分析し、戦略的に攻略するべきだ」との見方を示した。