建設工事契約での不当な人件費に勧告や社名公表…きょうから国交省

国土交通省は、国が定めた適正水準より大幅に安い人件費で建設工事の契約をした企業に勧告をしたり、社名を公表したりする制度を12日に始める。建設業界では多重下請けが常態化しており、元請けや発注先の企業が材料費の高騰に対応するために、下請け企業の人件費を削減するのを防ぐ狙いがある。建設作業員の賃上げにつなげ、人手不足の解消を図る。
新制度は改正建設業法が12日に本格的に施行されることに合わせて始める。国が民間企業同士の契約に厳しい制限を課すのは異例だ。
新制度では、国交省が人件費の指針として定める「標準労務費」を基準に違反か否かを判断する。標準労務費は、国や自治体が公共工事を発注する際の人件費を目安に、鉄筋工や型枠工など職種ごとに作業量あたりの単価を設定しており、工事に必要な人数や日数を掛けると受発注時の人件費の目安を算出できる。工事の発注者や受発注を行う建設業者などを対象に、この目安を大幅に下回る金額での契約や見積もりの提出を禁止する。
2024年の建設業界の就業者数は477万人で、ピークだった1997年(685万人)から約3割減少した。近年は専門知識が必要な工事ができる人材の不足により、工事の遅れや中断も生じている。
建設業界の平均年収は443万円で、全産業の平均年収より約16%低い。国交省は、多重下請け構造の中で、現場の作業を担う下請け企業の人件費が低く抑えられていることが、人手不足の一因になっているとみている。
建設業界では、工事に合わせて作業員や専門の技術者を確保するため、多重下請けが生じやすい。国交省は、改善に取り組む企業同士の取引を促したり、発注者が支払った工事の報酬が下請け業者に行き渡っているか、発注者などが確認できたりする仕組みも導入する。