首都直下地震の被害想定10年ぶり見直し、死者最大1・8万人・建物全壊焼失40万棟…前回より2~3割減

政府の中央防災会議の作業部会(主査・増田寛也元総務相)は19日、マグニチュード(M)7級の首都直下地震の被害想定を約10年ぶりに見直し、報告書を公表した。死者は最大1万8000人、建物の全壊・焼失は同約40万棟で、耐震化や火災対策などが進んだことにより、2013年の前回想定より2~3割減った。経済被害も約83兆円と前回の約95兆円より減少した。
政府は前回想定(死者約2万3000人、全壊・焼失約61万棟)を踏まえ、14年に「首都直下地震緊急対策推進基本計画」を策定(15年改定)。今後10年間で死者と全壊・焼失を「おおむね半減させる」との目標を立て、対策を進めてきた。計画策定から10年たったため被害想定を見直した。
地震は震源が異なる19パターンを設定。このうち被害が甚大で首都機能に最も影響を与える「都心南部直下地震」(M7・3)を対象に、季節・時間別の被害想定を算出した。
揺れは最大震度7(東京都江東区)で、死者と全壊・焼失が最大となるのは冬の夕方、風速8メートルの場合。死者1万8000人のうち火災が3分の2(1万2000人)を占める。建物被害は、揺れなどによる全壊が約13万棟、焼失が約27万棟。避難中の体調不良などで亡くなる「災害関連死」も今回初めて試算し、約1万6000~4万1000人と推計した。
経済被害の内訳は、資産が約45兆円(前回約47兆円)、経済活動が約38兆円(同約48兆円)。耐震化や企業のBCP(業務継続計画)の策定が進んだことなどにより減少した。
報告書は、首都中枢機能の確保や人的・物的被害への対応強化に加え、高齢化の進行や外国人の増加、デマ拡散などへの対応も必要だと指摘。国民一人一人が「自分ごと」として捉え、自らの命を守る必要があるとした。

◆首都直下地震=首都圏やその周辺で起こるM7~8級地震の総称。政府の地震調査研究推進本部によると、南関東の直下でM7程度の地震が発生する確率は、今後30年間で70%程度とされている。