網走監獄の雑居房からメモ発見、耐震工事中に…「教養持った」受刑者の備忘録か

網走刑務所の旧建造物を移築復元した国の重要文化財「博物館網走監獄」で、受刑者が書いたとみられるメモ13枚が見つかった。メモには列車の時刻や温泉地の名前、本のリストなどが書き込まれ、同博物館の今野久代副館長(60)は「読みたい本、(出所したら)行きたい場所を備忘録として書き留めたのではないか」と話している。
メモは、今年6月から耐震工事が始まった「五翼放射状舎房」の雑居房で、床板の隙間に小さく丸められた状態で見つかった。今野さんは、低温アイロンをかけて伸ばして読み進めると、B5判の紙に「急行まりも」などの列車名や具体的な時刻、料金、定山渓や蔵王などの温泉地名がびっしり書かれ、「流転の王妃」や「にあんちゃんの日記」などベストセラーになった本の題名、地理などの本の名前があった。
今野さんは「書き方が丁寧で字もきれい。漢字も多く、教養を持った人物」と推測する。本がベストセラーになった時期や列車の料金などから、1959年から63年に服役した26歳以上の再犯者で、書かれていた時計修理をした店の名前から東京に住んだことのある受刑者の可能性が高いが、特定はできないという。
博物館は移築の際、部材を一つずつ外すことはせず、2部屋ずつブロックにして搬送された。そのため、今回の耐震工事で初めて外される床や壁があり、耳かきなど、板の間に隠されたものが出てきている。今野さんは「時代背景をしのぶものがあり、工事終了後に建築ラボのようなコーナーをもうけ、見つかったものと一緒にメモも公開できれば」と話している。
網走監獄は1890年設置の網走囚徒外役所を前身に1903年の監獄官制発令で網走監獄になった。09年の火災で建物のほとんどを焼失したが、12年に再建された、数少ない明治期の木造監獄建築物。81年以降に現在地に順次移築保存され、2件8棟は2016年に国の重要文化財に指定された。