経営が厳しい医療機関から、物価高への対応や賃上げのために大幅な引き上げを求める声が上がっていた診療報酬。2年に1度の改定で今回、12年ぶりのプラスで決着しました。病院側からは期待する声が上がりますが、国民負担への影響はないのでしょうか?
藤井貴彦キャスター
「24日、政府は来年度の診療報酬改定について、全体を2.22%引き上げることを決めました」
小栗泉・日本テレビ報道局特別解説委員
「診療報酬の引き上げで病院はどう変わるのか、そして医療を受ける私たちの負担は増えるのでしょうか?」
「診療報酬は保険料・税金・自己負担で賄われていて、病院やクリニックなどが診察・治療の対価として受け取るものです。医師や看護師の人件費などにあたる『本体』と、薬の値段など『薬価』で構成されていて、2年に1度改定されます」
「この診療報酬をめぐっては、経営が厳しい医療機関から物価高への対応や賃上げのために大幅な引き上げを求める声が上がっていて、今回は12年ぶりにプラス改定で決着しました」
「これを受けて日本医師会の松本会長は24日、会見で『非常に前向きにとらえている』と話しています」
藤井キャスター
「こうなると医療現場の環境が良くなることを期待したいのですが、どうでしょうか?」
小栗委員
「実際にそれが期待されている病院もあります。赤字経営となっている東京科学大学病院を今年10月に取材した時の映像があります。建物の至る所が壊れたままになっていたり、血管の撮影などができる機械を耐用年数10年を超えても使用したりしているといいます」
「今回の改定について同病院の藤井靖久病院長は、『老朽化した医療機器や設備についても、緊急度や安全の観点から計画的に更新していく道筋が見え始めた』と話しています」
小栗委員
「ただ昨年度、病院の約7割が赤字だった一方で、クリニックは約6割が黒字でした。医療機関の規模や形態によって収入状況も違います」
「このため今年11月には、保険料を納める側の健保連なども『診療報酬にメリハリをつけるべきだ』といった要望を厚労省に出していました」
「今回の改定では、診療報酬のうち物価対応分・入院時の食費・光熱水費などは、クリニックや薬局などよりも病院への配分が高くなっています」
藤井キャスター
「医療機関は私たちにとって必要なものですし、もっと増やしてほしいなという気持ちもある一方で、私たちの負担に影響があるのかは気になるところですね」
小栗委員
「診療報酬は1%引き上げるごとに5000億円の財源が必要だとされています」
「(財源は)今回の改定では少なくとも1兆円以上となりそうですが、厚労省は賃上げによって働く人の給料が上がっていて、保険料全体としては増加しているので、実質的に国民の負担率は上げない形で財源を確保できるとしています」
「ただ、日本総研の西沢和彦理事は次のように話しています」
西沢理事
「このまま診療報酬が上がり続ければ、いずれ私たちの負担も上がると思う。特に若い働く世代の負担が増えてしまうので、どんどん診療報酬を上げればいいというものではない」
「在宅医療の整備によって入院日数を減らしたり、医療費を抑制したり、病院の人手不足の対策につなげたりするなど、医療全体の改革も必要なのではないか」
(12月24日『news zero』より)