各国の障害者権利条約の実施状況を監視する国連障害者権利委員会の委員で聴覚障害者の田門浩さん(58)について、活動の際に十分な手話通訳が付かないことから、権利委が国連本部に改善を要請する事態になっている。外務省も国連に対応を求めており、「ゆゆしき問題だ」(担当者)としている。
弁護士である田門さんは18人の委員に過去も含め2人目の日本人として選ばれ、2025年1月から4年間の任期がスタートした。
権利委の会議はスイス・ジュネーブの国連欧州本部で年2回(3、8月)開催される。委員はそれぞれ3週間ほどかけて日本を含む190カ国以上の条約批准国の障害者施策などの取り組み状況を審査する。
1日約6時間の公式会議で各国政府から報告を受けるほか、非公式の会議でも障害者団体や人権団体から現状や意見を聞く。
だが、国連は公式会議にしか手話通訳を用意せず、他の活動や滞在中の生活に伴う手話通訳は自前で手配する必要がある。このため、補助制度はあるものの経費の大部分を自腹で賄っている。
権利委は25年3月、国連の事務局や補助制度を管轄する人権高等弁務官事務所(OHCHR)に対して手話通訳の確保などを求める声明を出した。
それでも改善が見られないため、日本政府による提案の下、12月17日にはグテレス事務総長への要請決議が国連総会で採択された。【加藤昌平】