【動画】10年で激減「准看護師」養成学校が存立の危機 受験者減り採算悪化…廃止論も 地域医療の担い手確保へ
働きながら目指せる准看護師の養成学校が存続の危機にあります。
地域医療の担い手であり、再チャレンジの受け皿ともなっている准看護師。
その養成学校のいまを取材しました。
准看護師を目指すシングルマザー 働きながら資格取得へ
北海道旭川市にある看護専門学校です。
この日はオープンキャンパス。
生徒たちが看護師役を務め、受験生たちに実習を体験させました。
(山形輝美さん)「こんにちは、よろしくお願いします。これで音を聞いていくんですけども、一緒に聞きましょう」
血圧の測り方を説明しているのは、2年生の山形輝美さん。
准看護師を目指すシングルマザーです。
(山形輝美さん)「ドクドクドクと聞こえていたのがわかりましたか?聞こえ始めたところが収縮期血圧っていう上の血圧になるんです。こういうことを授業で練習していきます。迷っている時間はもったいないのと、入学してしまえばあっという間に2年は過ぎるので、迷っているなら受験してみることをおすすめします」
この学校では働きながら、または子育てをしながら、2年かけて「准看護師」の資格取得を目指します。
授業は午後からで、生徒の年齢もさまざま。
10代から50代が在籍しています。
(山形輝美さん)「自分の子どもくらいの年の子もいるので、若いっていいなあ」
“看護師”と“准看護師”の違いは? 判断や収入に「差」
看護師と准看護師では何が違うのでしょうか。
旭川市内のクリニックで働く准看護師の水上佳奈さんです。
准看護師は、医師や看護師などの指示を受けて診療や治療の補助をする仕事です。
看護師の業務と大きな違いはありませんが、自分の判断で急変した患者に対応することはできません。
また、収入にも差があります。
(水上佳奈さん)「いまから30分くらいは片付けをします」
病院の事務職員だった水上さんも、働きながら資格を取りました。
いまは正看護師になるために勉強を続けています。
(水上佳奈さん)「准看護師だと違う道からなれたり、どの年齢・どの立場でも挑戦することができる。(准看護師になって)よかったんじゃないかなと」
(あさひまちクリニック 若林義規理事長)「こういったところ(地方の医療機関)では看護師を募集してもこない。准看護師の方が来てくれて地域医療の支えになってくれるのはとてもありがたい」
准看護師は、戦後に病院が急増し、看護師不足を補うためにできた制度です。
専門学校は激減… 医師会が運営する学校も閉校へ
中学校卒業以上が要件で、最短3年かかる看護師に対し2年で資格を取得できます。
ところが近年、准看護師を養成する道内の専門学校は激減しています。
この10年で函館や帯広など6校が閉校しました。
残る3校のうち、医師会が運営する岩見沢の学校は9年後に閉校することを決めました。
受験者の減少による採算の悪化がその理由です。
(岩見沢市医師会 得地史郎会長)「本当に苦渋の決断であったんですが、閉校を決定した理由っていうのは一言で言うならば、医師会単独では維持することが困難になった。少子化に伴う受験数の減少、教員や講師の確保が困難になった」
2人の子どもを育てながら准看護師を目指す山形さん。
朝は目の回るような忙しさです。
(山形輝美さん)「いってらっしゃい、気を付けてね」
子どもの見送りを終えると、今度は夕食の下ごしらえです。
(山形輝美さん)「ひき肉が安かったのでハンバーグです」
手早く家事を済ませたあと、棚から取り出したのは分厚い教科書です。
午後の授業が始まるまでのわずかな時間、勉強に打ち込みます。
(山形輝美さん)「正社員で働くとなると年齢的に制限が結構、事務で働くとあるんです。求人が多い仕事って何かなって考えたときに、看護か介護が多かった。自分の力で資格を取って働きたいなと思ったのがきっかけです」
授業は午後1時から4時まで。
2026年2月の資格試験を目指し机に向かいます。
実は、山形さんが通う専門学校も経営状態は芳しくありません。
7年前113人だった受験生は2025年度33人まで減少。
収支の悪化による教育の質の低下を懸念しています。
(旭川市医師会看護専門学校 小場深雪副学校長)「今のままでは続けられないだろうと。続けたくても続けられない。育てるということもできなくなる。医師会(看護専門学校)の役割も終わっていくんじゃないかな」
准看護師制度の「廃止論」意見の対立も
学校が減っている背景には、准看護師制度の廃止論があります。
日本看護協会は、高度な医療に対応するため、制度の撤廃を求めてきました。
一方、日本医師会は人材確保のために准看護師は必要と主張し、意見が対立しているのです。
専門家は、准看護師は貴重な人材としながらも、次のように指摘します。
(旭川市立大学 山田直行准教授)「やっぱり専門性のある医療は国も必要としているところ。高度医療に適応できるというところでは、准看護師はちょっと置いて行かれているかなっていうところはありましたね」
夕方、学校を終えた山形さん。
子どもたちと一緒に夕食の準備です。
ハンバーグはみんなの大好物!
子どもたちは勉強と育児を両立させる母親を誰よりも近くで見てきました。
(駿斗さん)「(お母さんは)すごいよりのすごいだと思う」
(郁斗ちゃん)「母ちゃんが百点取ってほしい」
(山形輝美さん)「(子どもたちが)何かしたいことが決まったときに、お金がないからできませんと言いたくないので、経済的に自立したいというのがあります。働くようになったら今まで勉強ばかりしてきて、子どもたちにあまり構えなかったんですよね。なのでたくさん遊びに行きたいです」
人材確保と廃止論のはざまで揺れる准看護師。
看護師制度のあり方がいま問われています。