2026年の幕開けにあわせ、高市首相が読売新聞の単独インタビューに応じた。昨年10月21日の内閣発足以降、政治課題に取り組んだ日々を振り返るとともに、今年にかける抱負と展望を語った。
――日本は人口減少が続き、国内総生産(GDP)を見ても国際的な地位が低下している。首相は今年、この国をどのような方向にリードしていくか。
内閣発足以降、国民が直面する物価高への対応を最優先に働いてきた。25年度補正予算の成立という形で、国民との約束を少し果たすことができた。「強い経済」「強い外交・安全保障」をつくる上でも、一定の方向性を出すことができた。今年はさらにギアを上げて、自民党総裁選で掲げた政策と日本維新の会との連立合意書に盛り込んだ政策をどんどん具体化、実現していく年にする。
通常国会では、年度内に26年度予算案を成立させるため、国民民主党とも連携しつつ、野党の理解を得て安定的な政権運営を目指す。今と未来を生きる国民のために国力を徹底的に強化していく。すなわち外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力、それに加えて人材力だ。そのために強い経済が必要で、成長を追い求めていく。日本に希望を見いだす一年にしたい。
――今年は安全保障3文書の前倒し改定が控えている。防衛力強化をどう実現するか。
22年の策定時と比べ、現在は法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序に対する挑戦が勢いを増している。インド太平洋地域では、中国や北朝鮮による軍事力のさらなる増強、中露・露朝の連携強化などがみられる。ロシアのウクライナ侵略を教訓に、無人機の大量運用を含む新しい戦い方や長期戦への備えを急いでいるのが世界的な傾向だ。急速な安全保障環境の変化に適切に対応するため強い覚悟を持って、我が国の独立と平和、国民の命と暮らしを守り抜くために検討を進める。
――その一環として原子力潜水艦の導入を検討する考えはあるか。
次世代の動力を活用した潜水艦については維新との連立合意書にも記載があるが、次世代の動力が何かは決まっていない。あらゆる選択肢は排除しないが、抑止力・対処力の向上に必要な方策を検討するということで、特定の結論ありきで議論を進めることはない。
中国と対話 常にオープン
――首相の台湾有事を巡る国会答弁に中国が反発し、日中関係は冷え込んだ。日中関係をどう立て直すか。日米連携も重要さを増す中で、早期に訪米してトランプ大統領と会談する考えはあるか。
中国とは戦略的互恵関係を包括的に推進し、建設的かつ安定的な関係を構築するとの方針で首相就任以降、私は一貫している。日中間に懸案と課題があるからこそ意思疎通が重要で、中国との様々な対話については常にオープンだ。扉を閉ざすことはしていない。米国とは普段から私とトランプ大統領の間を含めて様々なレベルで緊密に意思疎通している。首脳会談はできるだけ早期に行いたい。
――首相は国民の信任を得る選挙の洗礼を経ていない。通常国会冒頭や26年度予算審議が一区切りとなる4月頃に衆院解散・総選挙を行う可能性はあるか。
日本は議院内閣制で、選挙で選ばれた国民の代表者から構成される国会で指名をいただいた。その責任を重く受け止めて、日々の政権運営に当たっている。補正予算をとにかく早期に執行してほしいと閣僚にも伝えている。国民に高市内閣の物価高対策や経済政策の効果を実感してもらうことが大切だと思っている。
――維新がこだわった衆院議員の定数削減は通常国会に議論が持ち越された。どのように実現を図るか。
議員立法で提出された衆院議員定数削減法案について、首相の立場としては国会での審議が進むことを期待するとしか申し上げられない。民主主義の根幹に関わる問題なので、各党・各会派でしっかり議論を重ねていただきたい。
――その維新とは連立を組んでいるものの、閣外協力の立場にとどまっている。維新に入閣を求める考えはあるか。
維新には、当初から責任も仕事も一緒に担ってほしいと申し上げてきた。相手方の意向もあるが、国会のみならず内閣でも責任と仕事を分かち合っていくのが連立政権の望ましい姿だ。
――一方、国民民主党とは昨年末に所得税の非課税枠「年収の壁」を巡って合意した。国民民主は26年度予算案の成立に協力すると表明している。国民民主との連立を目指す考えはあるか。
連立拡大は相手方の意向もあるので、コメントは控えたい。政治の安定がなければ、私が進めたい危機管理投資などの成長戦略や、力強い外交・安全保障政策を推進していくことはできない。常に政治の安定は目指していきたい。
旧姓使用と夫婦別姓 別物
――首相は旧姓使用に法的根拠を与える法整備に意欲を示している。
私は02年に旧姓の通称使用を法制化するための法案をまとめた。その後の制度変更を反映させ、25年1月に自民党に出し直した法案もある。ただ、今回は政府提出の法案となると、私の書いた法案とは分けて、しっかり検討してもらった方が良い。私は総務相時代に総務省単独で措置できる行政手続きなどについて、1142件を旧氏や併記で対応できるようにした。選択的夫婦別姓の導入に向けた議論とは全く別物だ。各党からの提案も受けながら、真摯(しんし)に検討していく。
――1月にもまとめる政府の外国人政策の基本方針では、不動産取得の規制を設けるかどうかが焦点の一つだ。外国人との共生と秩序の維持をどう両立させていくか。
外国人の土地取得などルールのあり方を検討するため、安全保障への影響や国際約束との関係を精査するよう担当閣僚に指示した。海外を見ると、安全保障などの観点から不動産の取得や利用を規制している例がある。海外の事例も研究しながら、基本的な考え方と取り組みの方向性を示したい。ルールを守って暮らしている外国人の方々が日本に住みづらくなってしまうようなことがあってはいけない。排外主義とは一線を画しながら、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対しては政府として毅然(きぜん)と対応する。
「ガラスの崖」結果でなくす
――初の女性首相としてプレッシャーもあるのではないか。
自民党総裁選に3回立候補したが、「初の女性首相」を目指していたわけではない。女性首相ということを、あまり意識せずに日々、仕事をしている。ただ、「ガラスの天井」が破れたことで勇気をもらえたと思う人がいたら、すごくうれしいことだ。ガラスの天井の先には「ガラスの崖」という言葉もある。危機的な状況や失敗しやすい状況下で、女性がリーダーに就きやすく、失敗すると「だから女性はリーダーに向いてない」との見方につながってしまうという話だ。そんな言葉が日本からなくなってほしいと思うので、懸命に働いて結果を出す。
――首相が政治の師と仰ぐ英国のサッチャー元首相は長期政権を築いた。首相の覚悟を聞かせてほしい。
政権の長さは、国会や国民に決めていただくものだ。せっかく首相になれたので、これまでやりたかったことを、この機会に一つでもたくさん実現できたら良いなと、日々大事にして働いている。(聞き手・政治部長 川嶋三恵子)
(インタビューは25年12月23日に行った)
たかいち・さなえ 奈良市出身。神戸大卒。松下政経塾を経て、1993年7月の衆院選で初当選。安倍晋三・元首相の下で自民党政調会長や総務相など要職を歴任、岸田内閣では経済安全保障相を務めた。3度目の挑戦となる昨年10月の党総裁選で小泉進次郎氏ら4氏を破り勝利した。衆院奈良2区。当選10回。64歳。