「審理を尽くすことなく請求を棄却した。不当決定だ」。34年前に福岡県飯塚市で女児2人が誘拐、殺害された「飯塚事件」の再審開始を認めなかった16日の福岡高裁決定。福岡市内で記者会見を開いた弁護団は、高裁が検察側に証拠開示命令を出すことなく、請求を退けたと強く非難した。
第2次再審請求は、事件で殺人罪などに問われて死刑が執行された久間三千年元死刑囚の妻が2021年に申し立てた。最大の争点は、確定判決が証拠採用した調書で「被害女児2人を通学路付近で見た」と証言していた女性が、「見たのは事件当日ではなかった」と自ら説明を覆した点をどう評価するかだった。
弁護側は、女性が事件当時も警察官に「見たのは当日か、はっきりしない」と話した記録があるはずだと訴え、捜査報告書など関連する証拠の開示を求めた。高裁は証拠目録の開示を勧告したが、検察側は拒否し、その後に裁判所のみに証拠目録や捜査報告書を提出。高裁も裁判官のみで内容を確認する「インカメラ審理」を続け、弁護側には開示しなかった。「関連する証拠はなかった」とし、そのまま審理を終結させた。
弁護団の徳田靖之弁護士(81)は会見で「何が本当だったのかを真摯(しんし)に明らかにする姿勢が裁判所にあると言えるのか」と高裁の姿勢を批判した。
再審を巡っては、法制審議会が12日、証拠開示ルールを新設する刑事訴訟法の改正要綱を法相に答申。裁判所は「再審請求の理由と関連する証拠」について、相当と認める時は検察官に提出を命じるとした。
元刑事裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授(刑事法)は「高裁は積極的に証拠開示を検察側に勧告、命令することもできた。不十分な審理で終わった印象だ。飯塚事件は第1次再審請求で、確定判決の有罪の根拠の一つだったDNA型鑑定結果の証拠能力が事実上、否定された経緯がある。高裁は改めて全ての証拠を総合的に考慮し直すこともできたのに踏み込まず、疑問だ」と話した。【森永亨、栗栖由喜】