25年8月16、17日にNHK総合で放送されたNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」で題材となった総力戦研究所初代所長・飯村穣中将の孫の飯村豊さん(79)が、NHKなどを訴えた民事訴訟の第1回口頭弁論が18日、東京地裁で開かれた。飯村さんは、祖父の人物像が誤った描写で不当にゆがめられ、名誉を毀損(きそん)されたとして、NHKや番組制作会社などに550万円の賠償を求めて提訴した。
「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」は、猪瀬直樹参院議員(79)が1983年(昭58)に出版したノンフィクション「昭和16年夏の敗戦」が原案。出身官庁や企業から機密情報を集めて模擬内閣を作り、日本が米国と戦った場合のあらゆる可能性をシミュレートした、実在の総力戦研究所に着想を得たドラマ。石井裕也監督(42)が脚本・編集・演出を担当し、初めて戦争ドラマに挑戦。“圧倒的な敗北”の結論を手にした若者たちが、開戦へ突き進む軍や本物の内閣と対峙(たいじ)する物語。実在した総力戦研究所に着想を得ているが、國村隼(70)が演じた所長の板倉大道陸軍少将や関係者はフィクションとして描き、放送の際はテロップでその旨、明示している。
第1回口頭弁論で、飯村さん側は、劇中の板倉陸軍少将は研究生達の「日本必敗」の結論を覆すよう圧力をかけた上、表面上、自由闊達(かったつ)な議論を奨励しつつ、反対意見を言う者は戦争の前線に飛ばすなど極めて卑劣な人物として描かれたと指摘。視聴者は、実在の飯村所長も同様の人物だと考えるのが通常で、社会的評価の低下は明らかで名誉を毀損(きそん)するなどと主張した。
飯村さんは25年、放送倫理・番組向上機構(BPO)にも審議入りなどを求める要望書を提出したが、BPOの放送倫理検証委員会は同10月18日に「視聴者において誤解が生番組内でテロップでフィクションであることを明示するなどしており、視聴者に誤解が生じることはない」とし、討議入りしないとした議事概要を公表している。それでも、第1回口頭弁論後の会見で「戦争に反対した人間が、戦争に賛成したと、例えフィクションであっても特定できる形で公共放送NHKが虚偽を放送して良いのか? NHKは歴史的な過ちを犯している」などと訴えた。