ネスレ日本は10月8日、キャッシュレス決済に対応したコーヒーマシンをレンタルで展開すると発表した。QRコードを使い会員用アプリから支払えるほか、SUICAなどの交通系ICカードでも決済できる。主に非飲食系のショップや事業所などに置いてもらうことで、人手をかけずにコーヒーが販売できるようにして、「スモールマス(大多数ではないが一定の規模を持つ市場)」と呼ばれる商圏での浸透を狙う。
アンバサダーの“次”の一手に?
同日都内で開かれた記者会見で、高岡浩三社長は「コーヒーを飲ませるのを本業としていなくても、ちょっとしたスペースで私どもの商品をサーブ(提供)するようなお店が増えている」と説明。人手不足におけるキャッシュレスのサービスの意義を挙げ、「私どものソリューションを提供すれば、人件費を上げることなくコーヒーを販売するというビジネスが成り立つ」と、特に非飲食店での商機があることを強調した。
同社が新たにキャッシュレス決済対応を打ち出すコーヒーマシンは「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ デュオ プラス」で、11月15日から提供開始する。月額の定額制で、例えばキャッシュレス決済や交通系ICカード利用、4G通信が可能なプランでは月2000円(税別)となる。
利用者はまず、コーヒーマシンの前部に搭載されたディスプレイからメニューを選択。次に支払い方法を選び、交通系ICカードをかざすなどして決済した後はカップを置いてコーヒーをいれる仕組み。飲料の価格はマシンの設置者が決められる。ネスレ日本の会員用アプリでQRコードを表示する方法のほか、専用のチップが入ったタンブラーでも決済が可能だ。
ネスレ日本はこれまで、「アンバサダー」と呼ばれる一般のファンに自社のコーヒーマシンを職場などに置いてもらう施策で、ユーザーを拡大してきた。現在、アンバサダーは約46万人に達している。
一方、今回のキャッシュレス対応マシンで主にターゲットにするのは飲食店、加えて自前では飲食物を出していないがユーザーが集まり待ち時間の発生する、自動車の販売店や保険代理店といったショップ・事業所だ。現在、ネスレ日本のコーヒーマシンは飲食店では約2300カ所、非飲食店系の拠点では約4200カ所に展開しており、今回は特に後者への普及拡大を目指す。
集金プロセスをネスレが代行
同社の担当者は「本サービスのポイントは単にキャッシュレス化だけでなく、集金プロセスを全てうちが代行する点にある」と強調する。現在、ネスレ日本のコーヒーマシンをレンタルで利用する場合、機器を職場などに置いたアンバサダーが集金業務を自ら担う必要があった。担当者も「以前から『オートで支払いできるようにならないか』といった声がオフィスなどから寄せられていた」と振り返る。
そこで、必ずしも飲料提供や支払業務に付きっ切りの人員を置くことができないが、人が一定時間滞留していてコーヒーを飲む機会がある、ショップや事業所といった場所に売り込む。ユーザーが自分で決済できるコーヒーマシンを置き、キャッシュレス運用の手間もネスレ日本側が負担することで、事業所側は低コストでコーヒーをユーザーに売り込むことが可能になる。
キャッシュレスと聞くと、自販機のように省人化してコーヒーを販売できる点が一番の売りのようにも見える。しかし、ネスレ日本の担当者は「今回のサービスは『隙間ビジネス』に対応したもの。無人(カフェ)か有人かというより、その“間”の部分が商機になる」とみる。
ディスプレイでは広告動画も
実際、今回のマシンはあくまで設置者が定期的にコーヒーの粉などを補充する必要がある。完全な“無人カフェ”向けというよりは、「従業員が多少いるが、コーヒーの提供に専従の人員は割きづらい」ようなショップや事業所を想定している。「完全に無人用のマシンを作ればはるかにコストが高くつき、しかも(外部から操作するための)オペレーター業務も発生する。そうでなく、今回の取り組みは“半無人”のような形で(カフェを)出していく」(同社の担当者)。
また、コーヒーマシンに取り付けられているディスプレイにはデジタルコンテンツも表示が可能。ニュース配信や、設置する事業所による自社広告の動画などもニーズに応じて流すことができる。
ネスレ日本の担当者は「大きい法人向けと言うよりは、仲間内で集まるカフェや個人事業主が(自分のショップでやる)サイドビジネスといったスモールマスに主な商機がある」とみる。