2025年を振り返ると、未成年のサイバー犯罪に関する事件がいくつか報道された。
とくに話題になったのは、携帯回線を不正に契約したとして男子中高生が逮捕された事件だ。オンラインゲームで知り合った彼らは、テレグラムで他人のIDやパスワードを大量に入手し、生成AIを使った自作プログラムで不正アクセスして携帯回線の契約を繰り返した。
また、男子高校生が生成AIで作成したプログラムを使い、ネットカフェ運営会社に不正アクセスした事件も注目された。約729万件の会員情報が漏洩した可能性があると発表されたが、本人の供述として「システムの脆弱性を見つけるのが楽しかった」と報じられている。被害者側の現実と釣り合わない軽々しい言葉が気になった。
「ホワイトハッカーに転身させろ」へのいら立ち
これらの事件の報道を受けて、SNSでは「才能のある若者だからホワイトハッカーに転身させろ」という声が上がっていた。「転身させろ」という言葉は、危険だ。踏み外した若者に大きな見返りを与えてしまう。
事件を起こして被害者が生まれても加害者は天才扱いされ、それを後から誰かがリクルーティングする。そう見えてしまえば、ほかの子がそれに続いてしまう。ホワイトハッカーを育成するために被害者を作ることはまったく賛成できない。
また、ホワイトハッカーの仕事では高い倫理観が求められる。顧客の機密に触れる立場で、事前に許可を取り、その範囲内で手順を守る――そういった仕事は、法律やルールから外れた行為を実際にやってしまう人には任せられない。
「犯罪なのだから肯定して持ち上げるべきではない」という声もあった。それは至極当然だ。ただ、「肯定するな」「持ち上げるな」「雇うな」で終わってしまうと、再発防止の手段を考える機会を逃してしまう。
未成年が事件を起こすこと自体は昔からあるが、問題は時代とともに学ぶ環境が変わったことだ。昔はセキュリティの技術を学ぶには、アンダーグラウンドな掲示板や書籍が唯一の情報源だったが、当時はよくも悪くも「技術」と地下コミュニティーの強い「思想やルール」が入り混じっていた。
主に国家権力への対抗が思想の背景にあり、個人の自由や権利を守るために社会に警鐘を鳴らしているという意識を本人なりに持って活動していた者もいた。同時に「やりすぎるな」「越えてはいけない一線がある」という暗黙のルールも存在していた。
今は技術と思想が分離されている。技術的な手順だけが切り出され、動画やネットで簡単に試せるようになった。
情報格差が生む「歪んだ入り口」