青森県の三沢漁港の北東約20キロの沖合で17日未明、漁船と貨物船が衝突して4人が死亡した海難事故は今後、八戸海上保安部と国の運輸安全委員会が詳しい状況を調査する。生き残った漁船の乗組員から「気付いたら、船がもうすぐそこにいた」と聞いた水産会社の社長は、「起きなくてもいい事故だったのではないか」として原因究明を求めた。
八戸海保によると、衝突したのは八戸市の興富(こうふく)丸漁業所属の底引き網漁船「第六十五興富丸」(140トン)と、貨物船「末広丸」(748トン)。第六十五興富丸は沈没し、末広丸は八戸港に接岸した。
事故後に八戸港に駆けつけた興富丸漁業の秋山貴志社長(46)によると、生還した乗組員からの聞き取りでは事故当時、第六十五興富丸は停止した状態で、1人が操縦室に入り、残りの12人はデッキで漁に使う底引き網の手入れや準備を行っていたという。
真夜中のため他の船舶が気付けるよう、灯火しながら作業していた。乗組員が貨物船の接近に音で気付くと「目の前にもう(船が)見え、衝突とともに飛び込んで逃げた」と秋山社長は伝えられたという。
末広丸は、海運会社「NSユナイテッド内航海運」(東京都千代田区)が船越海運(広島県呉市)から船舶と乗組員を借り受けて運航していた。NS社は17日、「お亡くなりになられた方々のご冥福(めいふく)を心よりお祈り申し上げます」とする声明をウェブサイトで公表。担当者は「事故の事実関係について情報収集を進めている。調査に全面的に協力していきたい」と話した。
海上衝突予防法は、2隻の船の位置関係に応じて、どちらに衝突回避義務があり、どのように回避するかを規定している。漁船が操業中と意思表示をしていた場合、航行する別の船が回避を行う必要がある。
第六十五興富丸が所属する八戸機船漁協の田村亘常務理事は「見通しのいい状況で、(衝突するのは)まずあり得ない。なぜ事故が起きたのか知りたい」と語った。
死亡が確認された階上町道仏の石沢文男さん(78)は第六十五興富丸の甲板長を務めていた。長男の一元(かずもと)さん(48)は事故を受けて都内の自宅から新幹線で帰郷したといい、読売新聞の取材に「めったに怒らない、穏やかな父親だった。とても勤勉な人で、それもあってこの年まで会社に必要とされていたのだと思う」とうつむいた。