側溝から聞こえるか細い鳴き声に気付いた市民らによる子猫の救出劇が、長崎市と佐賀県鳥栖市で相次いだ。警察や消防も出動して救い出された子猫の元気な姿に、市民らは胸をなで下ろした。専門家によると、好奇心旺盛な子猫は側溝に入り込んでしまい、運動神経が未発達のため出られなくなるケースがあるという。
1日午前7時45分ごろ、長崎市の観光名所・新地中華街沿いを流れる銅座川(川幅約20メートル)で、猫の鳴き声が聞こえた。通勤途中の記者が橋の上から川をのぞき込むと、川岸の排水溝内でぬれた子猫が鳴いていた。上の道路で猫2匹が心配そうに川をのぞき込んでいた。
居合わせた人の通報で、長崎県警の警察官が網をもって駆け付けたが、子猫は排水溝の奥に消えてしまった。警察官は「後は市役所にお願いするしかないか」と困り顔。だが、しばらくすると、排水溝と接続したホテル前の側溝から再び鳴き声が聞こえてきた。
記者や通行人、ホテルの宿泊客が側溝の蓋(ふた)を開け、しばらく様子を見ていると、遠巻きに人間による救出劇を見ていた2匹が側溝に近づき、警戒していた子猫は無事側溝からはい上がった。その後、3匹はホテルの脇でしばらく体をなめ合いながら戯れていた。
救出に参加したホテル宿泊客の茨城県美浦村、調教助手、先田裕輝さん(43)は「ほんま助かってよかった」と目を細めた。
2日午後7時ごろ、佐賀県鳥栖市本鳥栖町のファミリーレストラン前でも、道路側溝の中から子猫の鳴き声を高校生2人が聞いた。鳥栖高1年、田中孔太さん(15)と同1年、友田遥斗さん(15)。2人は午後5時半ごろにファミレスに入店。同7時前に店を出る際に鳴き声に気付いた。別の高校に通う友人の女子生徒3人も救助に参加。コンビニエンスストアの干し肉や、スマートフォンから流した猫の声で誘い出そうとしたが、うまくいかなかった。
現場には人だかりができ「消防に応援を呼ぼう」との声が上がった。鳥栖・三養基(みやき)地区消防本部にレスキュー隊の出動を要請。同8時すぎ、レスキュー隊員4人が駆け付け、特殊な工具で長さ約2メートルのコンクリート製の蓋2枚を開け、約30分後に救出した。
子猫の体長は15センチほどで、生まれて間もないとみられる。薄いグレーに茶のしま模様が入っていた。助け出された後、離れた場所で様子を見ていた猫に子猫が気付いて走り寄り、そのまま2匹で去っていったという。
田中さんと友田さんは「台風(18号)が接近していたので、助かって良かった」と胸をなで下ろしていた。
野良猫の生態に詳しい西南学院大の山根明弘教授(53)=動物生態学=は「野良猫は側溝の中で子育てすることがあるが、好奇心が出てきた子猫が親から離れて側溝の奥にどんどん入ってしまうことがある」と指摘。「経験が少なく、運動神経も未発達なため側溝から出られなくなる子猫がいる」と話し、長崎と佐賀の救出劇に「朝や夜など人が忙しい時間帯に子猫が助け出されたなんて、いい話ですね」と語った。【浅野翔太郎、満島史朗、末永麻裕】