半世紀で処分場満杯、東京23区がごみ有料化検討…「37年度以降に一斉導入」が軸

東京23区が、家庭ごみ収集の有料化に向けた検討を始めたことがわかった。全国の自治体の7割が実施済みで、処分場を抱える東京都も後押しする。ごみ袋1リットル当たり1円を想定し、およそ10年後の2037年度以降、全区で一斉導入する案が軸となるが、統一地方選を来年に控え、コスト増や住民の反発を懸念する区の間では慎重論も根強い。(大塚美智子、仲條賢太、五十川由夏)
17日朝、東京都新宿区百人町のごみ集積所に収集車が到着し、山のように積み上がったごみ袋の回収が始まった。一帯は外国人住民が多く暮らし、アジアなど外国料理を出すレストランや民泊施設も点在する。
この日は可燃ごみの収集日だが、缶やペットボトルが混入した袋も。区歌舞伎町清掃センターの統括技能長、兵藤尚武さん(53)は「分別が不十分だと量も増えてしまう。多言語で案内もしているが、なかなか理解してもらえない」とため息をつく。
各区が回収するごみは年間約160万トン(2024年度)。工場で焼却するなどし、東京湾にある都の処分場に埋め立てられる。処分場はおよそ半世紀で満杯になる見通しで、小池百合子知事は1月、「有料化の意義や効果を提示しながら、資源循環に資する施策をともに進めていければ」と区側に呼びかけた。
23区長で作る特別区長会は、他自治体の事例を参考に指定ごみ袋の料金を1リットル当たり1円にすれば、排出量は約1割減ると試算した。葛飾区の青木克徳区長は2月の記者会見で「一つの手段として非常に効果的。検討を積極的に進めるべきだ」と述べた。
ルール違反を防ぐため、区長会は住宅ごとに集める「戸別収集」への全面移行を視野に入れる。作業が煩雑化して人員や収集車を5割増やす必要があり、年間約220億円の追加負担が生じると分析している。
区ごとに導入時期が異なると、無料の区で「越境投棄」が起きる恐れもあるとしており、全区の合意や区条例の改正などに一定の時間がかかるとみている。
区長会は19日、学識経験者らで構成する検証委員会が、有料化の「早期実施」を提言する答申を公表した。
ただ、23区長の立場は一様ではない。読売新聞が尋ねたところ、「清掃事業を持続可能なものとするには減量が不可欠」(江戸川区の斉藤猛区長)、「区民の意識向上や、排出量に応じた公平な負担につながる」(目黒区の青木英二区長)と7人が賛意を示した。
一方、過半数の12人が「どちらとも言えない」と答えた。「区民に新たな負担をお願いすることになる」(中野区の酒井直人区長)、「区民負担、行政コストの増大も懸念される」(世田谷区の保坂展人区長)と慎重な検討を求める声が目立ち、「23区全体で検討している」などとして立場を表明しなかった区長もいた。
23区のうち18区では、今年から来年にかけて区長選が行われる予定だ。態度を明らかにしなかった区長の一人は「本音は賛成だが、負担につながる有料化は区民受けが悪い。区長選で『無償化』が争点にされる事態は避けたいと考える区長もいるだろう」と漏らす。
元都副知事で検証委の委員を務めた青山(やすし)・明治大名誉教授(公共政策)の話「外国人住民が多かったり、オフィス街が中心で家庭ごみが少なかったりと、区ごとに抱える事情も異なる。合意形成に時間を要するのであれば、一部の区による先行導入も検討すべきだ」
導入の自治体 全国の7割
環境省などによると、2023年度時点で家庭ごみの収集を有料化(一部を含む)しているのは、全国1741自治体の約7割に当たる1169。23区と島を除く都内30市町村の中で無料なのは檜原村だけという。
1700回を超える住民説明会を経て04年に有料化した東京都八王子市では、24年度のごみの総量が導入前の3分の2(約14万トン)に減少した。市は「市民の減量や分別・資源化への意識が高まり、ごみ出しのマナーも向上した」とする。
06年から始めた京都市は、障害者ら一部の市民以外は戸別収集は行っていない。ルール違反のごみ袋は回収せずに警告シールを貼り、集積所に残す仕組みだ。
00年度に約82万トンだったごみの量は24年度に約37万トンへ大幅に減っており、市は「説明会や警告シールで住民の理解も進んでおり、大きな問題は起きていない」としている。