実験用マウスの体細胞から遺伝的に同じクローン個体をつくる実験を20年間繰り返したところ、58世代目が限界だったと、山梨大の若山照彦教授らが24日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。雌雄の自然交配(交尾)で生まれた子に比べ、クローンは突然変異の発生頻度が3倍高く、変異の蓄積が原因だった。
哺乳類のクローンは1996年に英国で羊の「ドリー」が誕生し、日本を含む先進諸国がクローン人間作製を禁止する法規制を導入した。一方、クローン技術は優良な家畜の大量生産や、絶滅の危機にある種の保全に役立つ可能性があり、有害な変異を引き起こさない改良が必要という。
若山教授は米ハワイ大に在籍していた98年、世界で初めて体細胞クローンマウスをつくった。この再クローニング実験は理化学研究所に在籍した2005年に始めた。1匹の雌マウスから卵子の成長を助ける体細胞「卵丘細胞」を採取し、あらかじめDNAがある核を抜いた別マウスの卵子に核を移植。仮親に受胎させてクローンを誕生させ、約3カ月後に卵丘細胞核を採取して再びクローンをつくることを続けた。
その結果、成功率は最初の7.4%から26世代目で15.5%まで上昇。その後は低下し、最後の58世代目は生後数日以内に死んだ。代々のクローンはすべて雌で、合計1206匹。成功率が低下した27世代目以降は有害な突然変異が増えており、若山教授は「卵丘細胞核の卵子への移植時かその後の成長過程で生じた可能性が高い」と話している。
自然交配や体外受精では、精子や卵子の形成過程で父母から受け継いだ遺伝子の組み換えが起き、さらに受精を経るため有害な突然変異が蓄積しないと考えられる。 [時事通信社]