東日本大震災以降、福島県の農地7平方キロ・メートル超に太陽光パネルが設置されていたことが、読売新聞の衛星データ分析で分かった。このうち東京ドーム100個分に相当する4・7平方キロ・メートルは、東京電力福島第一原子力発電所の周辺12市町村に集中していた。避難の長期化で業者に農地を提供する住民が相次いだためとみられるが、パネル乱立が農業や街再建の支障になると懸念する声も上がる。
分析に使ったのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公開する「高解像度土地利用土地被覆図」。同図は日本などの人工衛星が捉えた地上の画像を人工知能(AI)で解析し、10メートル四方ごとに土地の用途を色分けして表示している。読売新聞は水田や畑だった農地のうち、震災後(2024年)にパネルに変化した面積を独自に割り出した。
その結果、福島県全体で7・1平方キロ・メートルの農地にパネルが設置されていたことが判明。約7割に当たる4・7平方キロ・メートルは、原発事故で国などから避難指示が出た浪江町や南相馬市など12市町村に集中していた。この地域は震災前、温暖な気候を生かしたコメ作りが盛んだったが、東京ドーム100個分もの広大な農地がパネルに姿を変えた。
避難指示は現在、帰還困難区域を除いて解除済みだが、震災から10年以上たち、避難先に定住した住民が農地を手放したり、後継者不在で廃業したりするケースも多い。使う当てのない農地を業者に貸すなどしてパネル設置に協力した住民も少なくないとみられる。
現地を取材すると、農地の真ん中や墓地を囲むように設置されたメガソーラーなど、各地にパネルが乱立する実態が浮き彫りになった。住民の一部からは「景観の悪化だけでなく、営農再開の妨げや帰還意欲の低下につながる」と懸念する声も上がっている。
同県は12年、太陽光などの再生可能エネルギー導入を復興の柱に据え、40年頃に県内の電力需要量の100%相当量以上の再エネ導入を目標に掲げた。その結果、震災後にパネルが設置された土地は県全体で31・9平方キロ・メートルに上ることが衛星分析からも判明した。
パネルに変わった土地の内訳は、県全体では森林が最多で全体の4割を占めたが、原発周辺12市町村は農地が6割と突出して多かった。原発事故で農地の維持が難しくなった特有の事情が影響した可能性がある。
パネルを巡っては、景観悪化のほか、壊れた発電設備の放置などで地域住民とトラブルになるケースが全国で相次ぐ。再エネと地域の共生は全国共通の課題で、法政大の茅野恒秀教授(環境社会学)は「再エネ推進で住民が分断されないよう地域全体で合意形成を図るべきだ」と指摘する。