女性用トイレに行列ができることが多いことから、国が問題の解決に乗り出した。女性用の便器数が男性用より少ない施設があるためで、3月にまとめられた指針案では、女性用の便器数を男性以上にするなどの方針が示された。女性からは歓迎の声が上がるが、改修には費用がかかり、対応が進むかどうかは分からない。(島香奈恵)
「不公平」
桜が満開の4月初旬、大阪城公園(大阪市)の近くにある商業施設では、女性用トイレに30人近い行列ができていた。記者も並ぶと個室に入るまで10分以上かかり、「(予定に)間に合わない」など、いら立ちの声が漏れ聞こえた。
近くの公衆トイレも同じく10人ほどが並び、最寄り駅の改札内でも通路まで約20人が行列になっていた。いずれも男性用には列がなく、壁の案内図をみると、男女のトイレの面積はほぼ同じで、小便器を含む便器数は男性の方が多かった。
行列に困った経験がある大阪府吹田市の団体職員の女性(60)は「女性のほうが時間がかかるのに、男女が同じ面積だと不公平で、行列もできますよね」と話す。
待ち時間平等に
女性用トイレの行列は、長年の課題となっていた。政府は昨年6月に策定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に女性用トイレの環境改善を盛り込み、対策に乗り出した。関係府省の連絡会議を開き、11月には指針を作る協議会も設けた。
指針作りでポイントになったのは、「待ち時間の男女平等」だ。空気調和・衛生工学会によると、百貨店・量販店におけるトイレの平均占有時間の目安は、男性30秒(個室は240秒)、女性90秒で、衣服の着脱に時間がかかる女性のほうが長い。
一方で多くの施設で女性用の便器数は男性用より少ない。国土交通省が昨年8~9月、11種類の施設約420か所で行った調査では、駅では男性用1に対して女性用は0・63しかないなど、7種類の施設で女性用が男性用を下回った。
国交省が示した指針案では、利用者がほぼ男女同数である施設においては、女性用の便器数が男性用以上になることを基準とした。男性利用者が多ければ、男性用を多くすべきだともしている。今月26日までパブリックコメント(意見公募)が行われ、その後早期に決定される見通しだ。
女性の政治参画をめざす市民団体「フィフティ・ネット」(大阪府茨木市)の森屋裕子代表(75)は指針案について、「トイレのことは当事者が声を上げづらく、長年放置されてきたことが、ようやく社会的な問題だと認識された」と評価する。
ソフト面で工夫
指針案では、便器の増設や男女の間仕切りを可変式にすることを提起するが、強制力もない。
施設の運営事業者などでつくる日本トイレ協会(東京)の高橋未樹子理事は、「売り場などを優先し、トイレは後回しになりがちで、指針が出てもすぐに増設するのは難しい。まずは利用実態を調べ、女性客が多い場所から改善するしかない」と話している。
大規模な改修をせず、行列を解消させる試みもある。
阪急阪神不動産(大阪)は3月末から、大阪・梅田エリアの駅や商業施設を中心に男女のトイレ個室内1857か所に、在室時間を表示するモニターを設置した。スマートフォンの利用など目的外で使うのを抑制するためで、同社の広報担当者は「試験導入で効果がみられ、今後も混雑緩和につなげたい」と語る。
国立競技場(東京)では、利用者の男女比に応じて男性用を女性用に変更するなどしており、入り口の男女の表示はロールスクリーンを使って切り替えている。百貨店内にある複数のトイレの空室状況を、スマートフォンで確認できるサービスを提供するなど、工夫している事業者もある。
働く女性増、整備追いつかず
女性用トイレの行列の背景には、女性の社会参加が進み、外出先での利用回数が増えたことがある。
総務省によると、2025年の15~64歳の女性の就業率は75・3%で、1986年に男女雇用機会均等法が制定される前の85年より20ポイント以上増えた。かつては男性の利用を想定し、女性用が少ない施設もあった。
国内外のトイレを研究している大阪大の杉田映理教授(開発人類学)は、「社会が変化しても基盤整備が追いついていない。女性は月経への対処もあり、トイレの待ち時間の長さは心身に影響する。指針案は女性の活躍を支える一歩であり、国は事業者を後押ししてほしい」と話している。