ヒグマの駆除が危険だとしてライフル銃を取り上げられた北海道砂川市の池上治男さん。 銃が戻ってきてもヒグマは撃たないと話す池上さんからヒグマ駆除の課題が見えてきました。
7年ぶりの発砲 司法などへの不信感
北海道猟友会砂川支部長池上治男さん、77歳。
11日、その姿はライフル射撃場にありました。猟銃所持免許の更新のための実技研修で、7年ぶりの感触を確かめます。
いまだに拭えない司法などへの不信感。
池上治男さん(77) 「ここで撃ってダメだったら誰も撃てない」
池上さんは、ライフル銃が戻ってきてもヒグマは撃たないと言います。
そこには、裁判後も残る問題がありました。
突然奪われた猟銃 最高裁の判断
池上治男さん。3月7日に77歳の誕生日を迎えました。
パーティーでは笑顔を見せるものの、70代は不本意な日々を余儀なくされました。
2018年。池上さんは砂川市内で子グマを駆除した時の発砲が危険だったとして、北海道公安委員会から猟銃所持許可の取り消し処分を受けました。
取り消し処分を不服として池上さんは提訴。
2021年、一審判決では勝訴するも、2024年の2審判決で逆転敗訴。裁判は最高裁に委ねられました。
池上治男さん(77) 「全国のハンターの人たち、猟友会もこの結論を気にしているから。司法の最終段階だから、猟友会が気持ちよく活動できるような判決になってほしい」
結果は、池上さんの逆転勝訴でした。 自治体や警察からの要請で有害駆除を行う、ハンターの公益性を重視したのが理由でした。
札幌高裁への不信感「言っていることがめちゃくちゃ」
判決が確定しても、池上さんの気持ちは完全に晴れることはありません。
理由の一つが、2審の札幌高裁判決です。
ヒグマに命中した弾丸が周りに跳ね、ヒグマの背後にある弾を止めるバックストップのさらに上にある建物に当たるおそれがあると指摘しました。
池上治男さん(77) 「高裁は言っていることがめちゃくちゃ。撃った弾がヒグマの体内を突き抜けて、あっちいったりこっち行ったり、そんなのあり得ない。普通に考えたら100%ない」
最高裁判決も、発砲の危険性については否定しませんでした。
池上治男さん(77) 「ここから建物は見えない。これが安土という。北海道猟友会の堀江会長もここに来た。これでダメだったらどこも(発砲が)できないと」
ライフル銃返還も…道公安委員会から直接の謝罪なし
最高裁判決の約2週間後、池上さんにライフル銃が返還されましたが、来たのは北海道警察の担当者。北海道公安委員会からの直接の説明や謝罪はありません。
道警本部保安課 徳田一志課長 「池上さんにご不便ご負担をかけたことをおわびするように伝えてほしいと指示を受けたので参りました。申し訳ありませんでした」
池上治男さん(77) 「公安委員会が直接来るのが当たり前。本当の意味で公安委員会が反省しているとは思えない」
【ライフル銃】1丁が廃棄されていた事実が発覚
返還されたのは、押収された2丁のライフル銃のうちの1丁。
しかも、2018年の発砲時に使用していたライフル銃は、証拠品として検察に送られたあと、廃棄されていたことがわかりました。
亡くなった友人から託された、思い出のライフル銃でした。 池上さんは怒りをあらわにします。
池上治男さん(77) 「まさか途中で当該銃がなくなる、しかも廃棄というのはあまりにひどすぎる。謝罪に来たのだったら、そのときに言うべき義務があった」
ライフル銃の廃棄について、検察は池上さんが所有権放棄書にサインしたため、廃棄したと主張しています。
一方の池上さんは、ライフル銃を手放す意思はなく書類を書いた記憶はないと話しています。
ライフル銃を取り戻したものの、池上さんは猟銃でのヒグマの駆除は積極的に行わない方針です。
池上治男さん(77) 「砂川では、外ではヒグマを一切撃たない。私のような目にあうことがまだまだ起きる」
ハンター責任 負わされる可能性否定できず
最高裁は発砲の危険性は認めつつ、当時の状況やハンターの公益性を重視しました。
逆に言うと、今後も状況によっては、ハンターが責任を負わされる可能性も否定できないと考えています。
2026年も全国で相次ぐクマの出没。駆除の最前線に立つのは池上さんのようなハンターです。
発砲現場の近くに住む人 「やっぱり安心します。警察官や役所の人が来ても『気を付けてください』だけ」
池上治男さん(77) 「こっちは当たり前のことしてるだけ」
なぜ善意で駆除にあたった池上さんが、7年間も屈辱の歳月を過ごさなければならなかったのか。
謝罪も検証もないまま、ヒグマが目覚める季節を迎えます。