岩手県大槌町の山林火災は24日、発生から3日目を迎えた。消防や自衛隊による消火活動は夜通し行われているが、鎮火の見通しは立っていない。避難所には多くの住民が身を寄せ、不安と疲労が募る。大規模な山火事は1年前にも同県大船渡市で起きた。「雨よ、降ってくれ」。北海道・三陸沖後発地震への備えも続く中、祈るような声が漏れ聞こえた。
「急いで山を下りて」
パチパチと激しく音を立てながら燃え広がる炎。辺りは焦げた匂いが充満し、少し離れた位置からカメラを構えても熱気で顔がほてる。24日正午すぎ、延焼が拡大する吉里吉里地区に向かう途中、この現場に偶然出くわした。
居合わせた岩手県警の警察官に話を聞くと、1時間前に周辺を巡回した際には、くすぶる煙以外に確認できなかったという。「短時間でこんな燃え方になるとは。この道もすぐ通行止めになると思うので、急いで山を下りてください」
太平洋に面し、三陸特有の入り組んだ湾が美しい景色を織りなす大槌町。時折吹く強風で勢いを増した炎が町の中心部に迫り、白い煙に覆われた市街地では視界もかすむ。
中心部から約5キロ離れた同地区は既に900ヘクタール超を焼失した。周辺住民100人以上が一時避難した町立吉里吉里学園小学部では、裏山からも火の手が上がり、延焼の恐れがあるとして24日午前に避難所を閉鎖。避難者の多くは麓にある公民館に身を寄せた。
高台にある学校近くの自宅で暮らす芳賀アイさん(94)は、裏山に立ち上る白煙を指差しながら、「津波じゃなく、山火事で避難を余儀なくされるとは思わんかった」と不安を口にした。
集落一帯は昼夜問わず、消防車やパトカーのサイレンがけたたましく鳴り響く。午後5時前には町の防災無線で「火の手が迫っています。ただちに避難してください」というアナウンスが流れ、一時騒然となった。
地上からの放水「難しい」
地元の消防団員、芳賀諒太さん(31)は「この辺りは急峻(きゅうしゅん)な地形が多く、地上からの放水が特に難しい。まとまった雨でも降らない限り、火は収まりそうにない」と表情を曇らせる。
昨年2月、同町から南へ約30キロ離れた大船渡市で、市の面積の約1割を焼損する山林火災が発生した。鎮圧までに10日以上かかり、鎮火したのは41日目だった。その記憶が鮮明な中で同町は大規模な山林火災に見舞われた。今月20日の地震に伴い北海道・三陸沖後発地震注意情報も発令されており、多くの住民が二重苦とも言える状況に疲労の色を隠せない。
15年前、東日本大震災の津波で家屋を失った女性(43)は高台の山側に自宅を再建した。目視で白煙が100メートルほどまで迫り、2人の娘を連れて公民館に避難した。「せめて自宅には燃え移らないでほしい」。無邪気にはしゃぐ娘を抱き寄せ、祈るように空を見上げた。(東北統括 白岩賢太)