“送電線がまちを横断” 風力発電に住民反発 問われる再エネ開発…ワインのまち・余市町に混乱

【動画】“送電線がまちを横断” 風力発電に住民反発 問われる再エネ開発…ワインのまち・余市町に混乱
ワインのマチ・北海道余市町で浮上した風力発電の建設計画に、住民が反発の声をあげています。
自然の力を利用する再生可能エネルギーをめぐってなぜ混乱が生じているのか、その背景を取材しました。
ワインのマチで浮上した…“風力発電”の建設計画
余市町で獲れたシカ肉です。
脂身が少なくヘルシーなエゾシカのステーキ、赤身肉のうまさが際立ちます。
そして、この料理に合わせるのがー
香り豊かな白ワインです!
余市産のブドウから作られました。
こちらでは地元の食材を生かした料理とワインが楽しめます。
(ヨイッチーニ 相馬慎悟代表)「高品質なブドウができるなだらかな丘陵地帯とか、強すぎない風が吹くとか、それがすべてそろっているのが余市町だと思います」
ワインのマチとして知られる余市町。
先週、XJAPANのYOSHIKIさんが提携先のブドウ畑を訪れました。
(YOSHIKIさん)「この地のワインというのは世界に通用しているでしょうし、これから世界に進出していけるものだと思っているので、そこにすごく興味がありますし、北海道でいいワインがあるというだけではなく、これが日本の今後の輸出産業のひとつになっていければと思っています」
世界的なミュージシャンが評価する余市のワイン。
しかし、そのマチで浮上したのがー
風力発電の建設計画です。
余市町にワイナリーを構える平川敦雄さんです。
13.5ヘクタールのブドウ畑から年間5万本のワインを作っていますが、近年、渡り鳥による食害に頭を悩ませています。
(平川ワイナリー 平川敦雄代表)「去年こちらのゾーンというのは鳥の被害を相当受けました。渡り鳥たちが醸造用のブドウをたくさん食べてしまったんですね。電線沿いというのはたくさんの食害を受けました」
そうした中、畑の近くである計画が明らかになりました。
計画進める関西電力に「なぜ余市なんだ」反発する余市町民
(平川ワイナリー 平川敦雄代表)「あの山の向こう側ですね。古平町との境界の側に大きな風車が建設される予定になっています。ちょうどあの山のくぼんだ所から余市町の余市インター方向に向かって鉄塔がのびていきます」
送電線が余市町を横断する風力発電の建設計画です。
この計画を進めているのは、大阪に本店を置く関西電力です。
関西電力によりますと、風車は余市町と古平町に合わせて最大18基を計画。
送電線の鉄塔は、余市町を横切る形で40基程度を建設する案が示されています。
4月に開かれた対話集会には、多くの町民が集まりました。
その中には平川さんの姿も。
計画に気づいてから反対の会を立ち上げ、代表を務めています。
(青柳記者)「関西電力と住民側の対話が冒頭以外非公開で始まりました。中から時折白熱した声が聞こえます」
(住民側)「やらないのが一番平穏に皆さんまるく収まって平和な生活ができるんです」
(住民側)「『環境が大丈夫』という結果が出たら推し進めていくのでしょうか」
(住民側)「なぜ余市なんだろうというのがちょっと不思議で」
(余市町の風力発電に反対する会 平川敦雄さん)「それぞれ皆さん生活がかかっていますから、そこにダメージを与えることになりますので、しっかりもっと明確に示していただかないと困ると思うんですよね」
(関西電力の担当者)「皆さまからいただいたご意見につきましてはしっかりと本社内に報告をするということで」
対話集会は2時間余りに及びましたが、双方の理解が深まることはありませんでした。
(余市町の風力発電に反対する会 平川敦雄さん)「関西電力側が私がお願いした図面、風車の位置、アクセス道、鉄塔と送電線の図面に関するものは詳細なものをいただくことはできませんでしたので、これ以上は出せないというのでとてもがっかりです」
全国各地で再生可能エネルギー事業を進める関西電力は、2023年から余市町で説明会を開いてきたといいます。
しかしー
(余市町民)「宿泊施設で仕事をしていますが、そこに関西電力の方が来て『土地を売ってくれ』というのでそれで初めて知って、びっくりして周りの方に聞いても誰も知らなくて」
(余市町民)「1か月くらい前かな。関西で作ればいい。関西だって山がある」
余市町などによりますと、今回の計画はすでに環境アセスメントと呼ばれる調査が進められています。
工事に入るには4段階の環境アセスをクリアする必要があります。
関西電力は2022年5月、第1段階の計画段階環境配慮書を提出。
これに対し、余市町は住民の理解が得られるよう丁寧な説明を求めたほか、景観を阻害しないこと、健康被害の調査などを求めました。
2023年に関西電力は第2段階の方法書を提出。
現在は第3段階に向けた準備を進めています。
余市町で反対の声が上がる一方で、道内には風力発電が根付いているマチもあります。
風力発電が根付くマチも 評価が異なる“風力発電”
(青柳記者)「風のマチ・寿都町です。こちらの大きな風車は町のシンボルになっているということです」
寿都町は全国の自治体で最も早い1989年に町営の風力発電施設を設置。
基幹産業の漁業を悩ませる風を逆手に取り有効活用しました。
現在は12基が稼働し、最も大きいものは羽根の先端までの高さが110メートル以上あります。
公表している売電収入は2022年度で5億円を超えました。
風車の近くに住む人はー
(寿都町民)「すごいよ風が吹けば。もう慣れてしまったよ」
(寿都町民)「音は多少はする時があるけれど全然気にならないです」
立地した地域によって、風力発電への評価は異なるようです。
専門家はその違いをこう指摘します。
(北星学園大学 藤井康平准教授)「寿都の場合は町が主導して町営で風力発電を担っているということがあり、『自分たちの風車』という自分ごととして捉えることができているのかなと思います。一方で今回の余市町は、誰かがやってきて自分の知らないところで風車を建てるということ、ここに断絶があるので、地域でどう使うかという議論になっていないと思うんですね。計画段階から住民・地域の方を巻き込んで、どういう風力発電にしていくかっていうことを手続き的にコツコツと積み上げていく必要があったなとすごく思っています」
余市町のワイン農家で風車の建設計画に反対している平川さんです。
(余市町の風力発電に反対する会 平川敦雄さん)「ここは余市の中でも非常に歴史が古く、果樹のとても大事な産地です。世界に誇れるワインが作れる場所です。この果樹産地のど真ん中を送電線がぶっちぎるということで、ブドウの品質面、収量面への被害、間接的に作りにくい状況が生まれていきますのでとても心配しています」
ワインのマチに浮上した風力発電の建設計画。
住民の不安を払しょくするには十分な情報発信と丁寧な説明が必要になります。