バス事故で生徒が犠牲に… 危険な「白バス」を生む、国も学校も見て見ぬふりをしてきた構造 専門家が指摘する“顧問任せ”の構造的矛盾

福島県で起きた高校ソフトテニス部のマイクロバス事故。生徒1人が死亡、20人が重軽傷を負うという痛ましい結果となりました。この事故に対し、名古屋大学大学院の内田良教授は「大変痛ましい事故に心が痛む一方で残念ながら、特異なケースとは言えないのが実情」と指摘します。過去にも繰り返されてきた部活動で移動中の事故。背景にある構造的な問題について、内田教授の解説をもとに深掘りしました。 6日、福島県で私立北越高校(新潟市)のソフトテニス部の生徒を乗せたマイクロバスが事故を起こし、生徒1人が死亡、生徒ら20人が重軽傷を負いました。 逮捕された運転手は報酬を得て利用者を輸送する際に必要な「2種免許」を持っておらず、現場からは現金3万3000円が入った「手当」と書かれた封筒が見つかりました。これは、自家用車(白ナンバー)で有償の運送を行う、違法な「白バス」行為にあたる疑いがあります。 自家用車など一般車に付けられる「白ナンバー」の車で有償で人を運ぶことは、違法な「白バス」行為にあたります。一方、バスやタクシーなど事業用車に付けられる「緑ナンバー」で有償で人を運ぶ場合は、2種免許が必要です。 この実態について、専門家の内田良教授は「特異なケースとは言えない」と断言します。「ついに起きたか、という印象です。つまり、その背景にあることというのは、いろんな学校がすでにやっていること。その中で最悪の事態が起きたなと感じました」と述べ、問題が氷山の一角であることを示唆しました。 過去にも部活動の移動中の事故が発生しています。2009年の大分県での野球部員の事故(死者1人、重軽傷37人)をはじめ、2011年(大分県)、2014年(青森県)、2016年(石川県)、2024年(群馬県)と、同様の事故が全国で相次いでいます。 これらの事故に共通しているのは、運転していたのがプロのドライバーではなく、「教員」「保護者」「コーチ」であった点です。今回の福島の事故で逮捕された運転手も、プロではなく、学校側が依頼した人物でした。さらに、北越高校のソフトテニス部顧問は記者会見で、自身も数年前に生徒を乗せた車で事故を起こして以来、運転はしていなかったと明かしています。 事故が繰り返される背景には、学校活動における「部活動」の特殊な位置づけがあります。修学旅行や遠足といった「公式行事」では、学校が旅行会社に発注し、プロのドライバーが運転する観光バスを手配し、複数の教員が同行して安全対策を講じます。 しかし、「部活動」は基本的に「顧問任せ」となっており、保護者や教員など「できる人」の運転が常態化していると内田教授は指摘します。実際に、事故を起こした北越高校の理事長は会見で「部活にすべてを丸投げ状態だった」「学校として気づかずに長年いた」とその実態を認めました。 内田教授は、この構造について「部活動はあくまで自主活動の位置づけ」であると解説。「“自由”である反面、その危うさは数十年前から指摘されてきた。学校としての安全管理が不十分な場合も多い」と述べ、制度上の曖昧さが危険の温床になっていると分析しました。(内田教授)「部活動は、計画や費用などの面で顧問任せになってしまっている。学校や教育行政からの関与・チェック体制が及びにくい。その結果、危ういことをやっていても“なあなあ”で済まされていく。そういったことが昔から繰り返されています」 スポーツ庁は2018年に「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定しています。この中では、少子化に伴う合同部活動や地域クラブへの移行、長時間練習の制限などが盛り込まれていますが、「移動時の安全確保」については明記されていません。 内田教授は「本来なら予算捻出や体制づくりに知恵を絞るべきだ」としながらも、行政の対応が的外れな場合があると指摘します。例として、香川県などの教育委員会が「教職員向けにマイクロバスの運転講習会を開催」している実態を挙げ、「その方向に努力するのかと…」と語りました。「善意・ボランティアでの運転に学校や教育委員会が甘えてきた」と、安易な解決策に頼ってきた行政や学校の姿勢を厳しく批判しました。 内田教授は、事故を防ぐための具体的な方策として「遠征の回数を減らし、本当にいくべき時に予算を充てて“緑ナンバー”(貸切バス)を手配すべき」という「貸し切りバス」ルールの厳格化を提言しました。 しかし、そこにはコストの問題が立ちはだかります。番組の解説によれば、貸切バスの運賃は、関越道のバス事故以降の安全対策強化(運転手の労働時間是正など)により、高騰傾向にあります。これまで日帰りで可能だった行程が1泊2日になったり、ドライバーが2人必要になったりするケースが増えたためです。このコスト増が、安価なレンタカーや自家用車での移動、つまり「白バス」行為がなくならない一因となっています。 最終的に内田教授は、「国がガイドラインを制定」「安全確認を学校全体で行う仕組み」「部活動に安全管理のための予算をつける」といった、「子どもたちの安全を守る公的なルールづくりが必要」だと結論付けました。そして、「ルールもなければ実態もわかっていない。危ういねっていうのはみんなわかっているが、見て見ぬふりをしてきた」と述べ、これまで放置されてきた問題に社会全体で向き合う必要性を強く訴えました。(内田教授)「誰かの大きな事故があって、その犠牲の上に成長があるというのは決して良いモデルではない。そんなモデルは一刻も早く改めて、安全安心にしっかりお金をかけて土台を作って、その先はどういう練習をしようが自主的に、という形にしなきゃいけない。しかし今は丸ごと自主的になっていて、それで子供が犠牲になっている。お金をしっかりと当てて、どのように変えていくか、これは国もしっかり考えてほしいと思います」(『newsおかえり』5月12日放送)